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認知症のリハビリテーション

 
 脳を活性化させるリハビリテーションも、認知症の進行スピードをゆるめたり、失われた能力を回復させる効果があります。認知症の患者のリハビリテーションは生活をゆったりと、しかも役割を持ちながら楽しめることが大切です。

 一般的なリハビリテーションと違うところは、個々の患者の「できること」を生かして、人との積極的な交流を保てる場を提供することで、病気の進行を遅らせたり、症状を安定させる効果があります。

 リハビリテーションには回想法や、音楽療法、芸術療法などさまざまなものがあります。



回想法
 回想法は過去を思い出して語る療法で、アメリカの精神科医によって始められた治療方法です。

 それまでは、過去を振り返る行為は現実逃避的であり、治療の妨げになるという考え方が一般的だったのですが、実際に効果があることがわかり、高齢者への認知症の効果が注目され、広く知られるようになりました。

 回想法は個人に対して1対1で行う「個人回想法」と「グループ回想法」がありますが、施設や病院でよく行われているのはグループ回想法です。

 記憶障害は進んでいても過去の思い出は残っていることが多く、物忘れが激しくても、比較的覚えている昔の記憶を活用できると言うのがメリットです。心理的な安定、そしてこれからの生活を自分らしく生きていただくということが、回想法の大きな目的です。

 子どものころの遊びや、お祭り、あるいは昔使っていた生活器具など共通する話題を選んで、体験を語り合います。懐かしい昔を思い出し、それを語ることによって、脳が刺激されます。また楽しかった過去に戻ることで、一時的であれ障害の不安や混乱から開放され、こころが癒されます。

 これを続けておこなうことで、認知機能が改善されたり、積極性や対人とのコミュニケーションが増えるなどの効果があることがわかってきました。回想法の良いところは家庭などでもでき、認知症の高齢者が楽しんでできることです。



音楽療法
 音楽療法は、認知症のお年寄りには効果の高い療法として評価されています。好きな音楽を聴く、カスタネットやタンバリンなどの簡単な楽器を奏でる、あるいはカラオケで歌ったり、なつかしい唱歌を合唱したりと、言葉によるコミュニケーションが難しくなった人でも参加できます。

 音楽療法は脳を活性化させるばかりでなく、気持ちを落ち着かせるリラクゼーション効果もあり、食欲が増す、ぐっすり眠れる、笑顔が増えるなどの好ましい結果を生み出しています。そのため、認知症患者が利用する多くの施設で実施されています。

 音楽療法士による治療では、認知症患者の生育暦や音楽暦を調べ、思い出の曲を織り込んだプログラムが作られます。

 音楽と思い出は密接に結びついていますから、認知症の人は記憶が掘り起こされ、自分の人生を再認識し、自信を回復することができるようになります。 

 家庭で行う場合には、特にルールはありません。市販されている音楽CDなどを利用して本人が好きな曲を流すようにしたり、一緒に思い出の歌を歌ったりすることで、十分脳は刺激されます。


 カラオケボックスに連れて行って大きな声で歌うのもいいでしょう。いずれにしても認知症の人が楽しんでやれるようにすることが大切です。


運動療法
 運動量の多い人は、少ない人に比べてアルツハイマー病や認知症になりにくいというカナダのデータがあります。運動には、脳の機能を維持するだけでなく、脳の働きを活性化する効果もあります。


 ともすると、高齢者認知症の場合は、安静にしていたり、家の中に閉じこもる生活になりやすく、ものを考えたり判断する精神機能が衰えやすくなります。運動は行いやすい動作を選び、転倒しないように安全性を確保して行うことが必要です。

 その点、日常生活の中でもだれでも簡単に出来るのがウォーキングです。認知症の人はからだを動かす機会も減りがちです。脳の活性化のためだけではなく、健康維持と活動能力を維持するためにもウォーキングはお勧めです。家族が付き添って話しをしながら歩くと効果的。ともかく楽しく歩くことがポイントです。