膝の痛みの治療は

膝の痛みを治す!変形性膝関節症

運動療法を助ける治療

 治療の基本は運動療法ですが、痛みが強かったり、滑膜炎や関節水症などがあると、運動療法に支障をきたします。そのような場合は痛みや炎症を抑える治療が必要になります。しかし、こうした対症療法(痛みや炎症などの症状を抑えるための治療)だけでは、変形性膝関節症を治すことはできません。対症療法は、運動療法を無理なく行うための補助療法です。運動療法を補助する主な治療法には次のようなものがあります。

薬物療法・・・痛みや炎症を抑えるために飲み薬、湿布、塗り薬、坐薬などを用いる。症状などによって使い分ける。

関節注射・・・関節水症を起こし、膝に水がたまっているときに、水を抜いて薬剤を注入する。

物理療法・・・光や熱、超音波、低周波、レーザーなどを用いて痛みをやわらげる。

足低板、膝装具・・・O脚変形が見られる場合に、靴の中敷のような足低板や、脚全体に巻きつけるひざ装具などの治療具を用いて脚を矯正する。

手術・・・足低板や膝装具では不十分な場合に、すねの骨を切ってまっすぐにする手術や、人工関節に置き換えるなどの手術を行う。



薬物療法
 変形性膝関節症の一番の問題は、関節軟骨が破壊されることですが、現在のところ、薬で関節軟骨の傷を治したり、骨の変形を治すことはできません。変形性膝関節症の治療で用いるのは「鎮痛解熱薬」で、痛みや炎症を抑える効果があります。変形性膝関節症が進行する過程で関節内に強い炎症が起こり、関節軟骨の破壊に拍車がかかる時期があります。こういった時期に鎮痛解熱薬を用いると、関節の破壊をある程度ふせぐことができます。変形性膝関節症の治療の基本は運動療法ですが、タイミングよく薬を使用せればとても効果があります。痛みのために運動療法ができない場合も、まず薬で痛みを治めてから運動療法を開始します。鎮痛解熱薬には、飲み薬と、湿布や塗り薬、坐薬などのタイプがあります。それぞれに長所や短所があり、副作用もあります。

関節注射
膝に水がたまる「関節水症」は、関節の内側を覆っている滑膜がなんらかの刺激を受けて、吸収する以上に多量の関節液を排出するために起こります。そして、一度膝に水がたまると、水がたまっていること自体が滑膜を刺激するために、さらに関節液が増え、痛みや熱感などの炎症症状を悪化させます。
 この循環を断ち切るために、膝にたまった関節液を注射器で抜くことが必要になります。この治療法を「関節注射」といいます。しかし、関節液がたまればまた抜けばよいというものではありません。関節液を抜いても、関節液がたまる原因を治さなければ、すぐにまた関節液がたまってしまいます。また、膝に注射針を刺せば不快な痛みが生じます。そのため、関節水症による炎症がひどいときだけ、膝の水を抜くという治療が行われます。たまっている関節液の量がそれほど多くないときには、滑膜の炎症が治まって自然に吸収されるのを待ちます。また、注射器で関節液を抜くとともに、ヒアルロン酸を注入する場合もあります。ヒアルロン酸には炎症を抑える効果があり、また、もともと関節内にある成分なので副作用の心配もありません。 

物理療法
 「物理療法」とは、光や熱、電気などの物理的な作用を利用する治療法のことで、患部を温める「温熱療法」と患部を冷やす「寒冷療法」があります。温熱療法は、患部の血行を促して膝の痛みをやわらげる効果があり、慢性的な痛みや、慢性炎症全般などに用います。病院や整形外科医院では、超短波や低周波、レーザー、赤外線などを使って患部の細胞を刺激し、血液に循環を促進して暖めますが、家庭でも、お風呂に入ったり、ホットパックや暖めたタオルなどを使って暖めるのも効果があります。ただしカイロは低音やけどを起こすことがありますから使い方には注意が必要です。また、冷湿布や冷やしたタオルなどで患部を冷やす寒冷療法でも、膝の痛みがやわらぐことがあります。とくに冷湿布は温湿布と同じように患部の血液循環作用を改善する効果があります。

足低板、膝装具
 変形性膝関節症が進行して脚がO脚に変形すると膝の内側にばかり体重がかかって、内側の関節軟骨の破壊はさらに進行します。この悪循環を断ち切るには、O脚変形を矯正する必要があります。そのために用いられるのが「足低板」や「膝装具」です。O脚に変形した脚をまっすぐに矯正すると、傷んでいない外側に関節軟骨にも体重が分散されるので、内側の関節軟骨の負担とともに、膝の痛みも減り、内側の関節軟骨の破壊も抑制されます。O脚に変形した脚は、膝が外側に開いているために、すねが斜めに倒れています。そこで、足と床の間に板を差し込んで足の裏の外側を持ち上げ、すねがまっすぐに立つようにしてO脚を矯正するのが「足低板」です。しかし、足低板を用いると、かかとが内側に横滑りしやすくなるために、不安定に感じることもあります。また、持ち上げられる高さには限度があるため、極端にO脚変形している場合は矯正が難しくなります。一方、「膝装具」は、膝の上下を支えてO脚変形そのものを矯正します。しかし、実際につけるとなると抵抗を感じる人が多いようです。

手術
変形性膝関節症の手術には「高位脛骨骨切り手術」、「人工膝関節全置換手術」の2つの手術法があります。

高位脛骨骨切り手術
高位脛骨骨切り手術はとは、O脚に変形した脚の脛骨を切ってまっすぐにつなげ直して、正常な膝や脚の形に近づける手術です。手術によって傷んでいる関節軟骨の負担が減り、膝の痛みがやわらいで、膝もよく動くようになります。しかし、骨を切ったあとは、骨折した場合と同じように骨と骨がきちんとつながるまで固定しておく必要があるため、長期間の入院と治療が必要になります。この手術は変形性膝関節症が進行期以上まで進んだ場合に行われるのが一般的です。

人工膝関節全置換手術
大腿骨の脛骨の傷んだ関節軟骨などの一部を切除して、金属やプラスティック、セラミックなどでできた人工関節に取り替える手術です。この手術の長所は、膝の痛みがすっきりとなくなることです。また、高位脛骨骨切り手術ほど長い入院、治療期間を必要としません。しかし、正座のように膝を深く曲げることはできず、また、人工関節は骨と一体化することができませんので、長期間経過するとゆるんでくることがあります。その場合は再手術が必要となります。