膝の痛みの治療は

膝の痛みを治す!変形性膝関節症

治療の基本は3種の「運動療法」

 治療の目的は、痛みのためにあまりつかっていないひざを、将来にわたって使えるように治すことです。膝を使うために治すのですから、まず第一に膝を動かす筋肉を手入れすることが重要です。といっても、特別なことをするのではありません。そのためにはだれにでも出来る3種類の運動療法が効果的です。

太ももの筋力アップ
膝への負担を軽くするために、体重を支えている大腿四頭筋(太ももの筋肉)をきたえて強くするトレーニングを行う。

歩行習慣をつける。
ウォーキングを習慣にして、痛みの出ない範囲でひざを使いながら筋力をきたえる。

スチレッチング(柔軟体操)を行う。
膝の可動域(動く範囲)を維持するためのスチレッチング(柔軟体操)を行う。

 変形性膝関節症を治すにはこのような3種類の運動がありますが、膝の痛みを解消するには、とくに太もものトレーニングが有効です。太ももの筋力がつくと、膝の動きを制御できるようになり、関節軟骨に傷がつくのを防げるようになります。さらに、変形性膝関節症の悪化を防ぎ、確実に膝の痛みを軽減させることができます。
 また、運動によって膝を適度に動かしていると、関節液の循環がよくなり、関節軟骨に栄養が行き渡って、ある程度の傷は自然治癒力で治してくれます。そのほか、トレーニングによって関節周囲の関節包の血行がよくなるため、膝の痛みをやわらげる効果も期待できます。運動療法は即効性は期待できません。気長に続ける必要があります。
 また、ウォーキングですが、どのくらい歩けばよいかは、その人の膝の状態にもよります。膝の痛みを治すうえで、もっとも大切なのは、「痛みなしに歩く」ということです。一般的に8千歩くらい歩くことは膝の痛みをやわらげる効果があります。人によっては8千歩歩く前に痛みがでることもあります。そのようなときは、その時点で歩くのを中止しなければなりません。痛みを我慢して歩くのは、変形性膝関節症を悪化させることになるので、避けるようにしなければなりません。

太ももを鍛えるのが一番効果的
 変形性膝関節症になったら。大腿四頭筋や体重を支えるその他の筋肉をきたえて、それ以上軟骨に過大な負担がかからないようにすれば痛みは確実に軽減します。膝が痛いのにトレーニングをしたらますます痛くなるのでは・・・。という疑問をもたれるかもしれませんが、この方法は最も安全で効果的です。
 筋肉の鍛え方はいろいろありますが、変形性膝関節症の場合は、痛んでいる関節軟骨に負担をかけないようにすることが大切ですので、膝をなるべく動かさずに、筋肉だけをきたえる方法で行わなければなりません。
 まず、いすに腰かけて片方の膝を伸ばし、空中に10秒間くらい保持します。1回行ったら3〜5秒間休み、これを20回繰り返します。そしてもう片方の脚も同様に繰り返して、これを1セットとします。膝を伸ばすときは、太ももの筋肉が硬くなり、力こぶができるように力を入れます。膝をまっすぐに伸ばすと痛む場合は、膝をまげたままで行ってもかまいません。膝を動かさずに筋肉だけをきたえるこの方法は、効果があらわれるのに時間がかかりますが、だれでも安全に行うことができます。できればひじかけいすで行ったほうが安定し、腰に負担がかかりません。 また余裕があれば、足首に1〜2キロぐらいの重りをつけて負担を増やすと、より効果的なトレーニングになりますが無理はしないようにしましょう。1セットのトレーニングは約10分で終わりますが、習慣なるように毎日続けることが肝心です。

ストレッチングで膝を柔らかくする
 ストレッチングとは柔軟体操のことです。膝の動く範囲を広げるためには、痛みの出ない範囲で膝をゆっくりと動かすことがポイントです。膝が曲がらない、まっすぐに伸びないという症状は、痛みのためにあまり膝を使わなくなった結果、膝関節周囲の筋や腱、靭帯などが短縮し、柔軟性が失われて起こります。このため、ストレッチングでこれらの軟部組織の柔軟性を取り戻すことが大切です。ストレッチングを続けていると、しだいに膝が柔らかくなって動く範囲が広がり、やがて正座もできるようになります。さらに、膝もまっすぐに伸ばせるようになり、痛みも引いてきます。
 ストレッチングをするときにもっとも大切なのは、「ゆっくり行うこと」です。実際に行うときには次の3つの点に注意して行ってください。「反動をつけずにゆっくりと行う」、「痛みをがまんせずに痛みの出ない範囲で行う」、「痛みが出そうになったらそこで止めて30秒ほど待つ」これらの点に注意して、まずゆっくりと膝を伸ばしていきます。いすに座っても、床に直接腰を下ろして行ってもかまいません。股関節を深く曲げると、膝は伸びにくくなるので、あまり前かがみにならないように注意します。次に、膝を曲げるストレッチングを行います。このとき、股関節が伸びていると膝は曲がりにくくなりますから、少し前かがみになって行うといいでしょう。
 痛みが強くて膝を曲げられないときは、お風呂の中で行うと膝が温まり、また浮力で体重による負荷が減るため、膝を曲げたときの痛みが減ります。膝を伸ばすストレッチングも、お風呂から出て膝が温まっているうちに行うと効果的です。




ウォーキングは最も手軽な治療法
 歩くことは日常生活の中でも、もっとも基本的な活動であり、いつでも、どこでも、だれにでもできる安全な治療法といえます。ウォーキングは、膝の痛みが軽くなったら、平坦な道を20〜30分くらい歩くことを目標にします。ただし、歩いているときに痛みが出たら、すぐに歩くのを中止し翌日は歩く距離を短くします。逆に、歩いても痛みが出ないようなら、少しずつ距離を延ばしていきます。
 また、少し汗ばむくらいのスピードで歩くことが大切です。歩く速度で運動量が異なりますから、筋力をつけたり体重をコントロールするために歩くときは、だらだらと歩いたのでは効果がありません。ウォーキングのときの注意としては「高低差のない歩きやすい道を選んで歩く」、「膝にやさしい軟らかで平らな道を選ぶ」、「歩行に適した靴を選ぶ」などです。
 特に、靴についてはウォーキング用につくられた靴を履いて歩くのと、硬くて底の薄い靴を履いて歩くのとでは、膝にかかる負担が違います。不適切な靴で長時間長距離を歩くと、膝を傷める結果にもつながりますので注意が必要です。