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家族のアルツハイマー病、こんなときはどう対応

 
  食事をしたことを忘れてしまう   物をあさる
  買い物が止まらない   トイレでない場所で排泄をする
  頑固で暴力的になる   暴力を振るう。大声でわめく
  夜になると歩き回る   ウソをつく
  無気力でうつ状態になっている   人をどろぼう呼ばわりする
  入浴をいやがる   同じことを何度も聞く
  自分で服が着られない   「うちに帰る」と言って外にでる
  家族がわからなくなる   自分の便をいじる
  失禁した下着を隠す   自分がいる場所がわからない
  道に迷って帰れなくなる   言葉がでてこない
  デイサービスを嫌がる   トイレが間に合わない
  ガラクタを拾ってくる
 


 アルツハイマー病の人は「食べたことを忘れる」ということが起こります。そして、際限なく食べたがるということもあります。

 そして、周りの人に「うちの嫁はごはんを食べさせてくない」などと、言いふらす話をよく聞きます。これらの対応には、食べることから意識をそらす方法で対処しましょう。

食べたい気持ちを満たす
 「ダメ」といっても聞き分けてもらえません。かといって食べたい衝動に応えてばかりいれば、生活習慣病の心配もでてきます。その場しのぎに出す食品の種類にも気をつけましょう。低カロリーで、食べきるのに時間がかかるものを考えるようにします。

食べることから意識をそらす
 食べることで、寂しい気持ちをまぎらわせていることがあります。短い時間でも、お茶などを飲みながら話し相手になるといいでしょう。また、食べたいという欲求が起こる前に、本人が関心を持ってできる仕事や楽しみなどを用意するというのもひとつの方法です。

食べ過ぎ防止を工夫する
 生野菜のサラダなどは比較的満腹感が得られます。また、茶碗をひとまわり小さなものに替え、おかわりしながら食事ができると、十分に食べたという気分になります。

 1回の食料を半分にして、2回に分けるという方法もあります。汁物を多くするのもよいでしょう。



 高齢者に限らす、寂しさや不安を買い物で満たそうとする人もいます。アルツハイマー病が進むと、それがエスカレートして、買い物にいって、食べきれないほど高価な食材を買ってきたり、家族を困らせてしまうことがあります。

 お金や物の量など、いろいろな判断ができなくなったことで、常識では考えられないような買い物をしてしまうことがあります。

多額なお金を持たせないようにする
 認知症が進んでいくにしたがい、本人の財産も家族が管理しなければならなくなります。本人が不信感を抱かないよう、あらかじめ家族や身内同士でよく話し合いをしておかなければなりません。

 本人には小銭を多く持ってもらい、その金銭で買い物を楽しんでもらうようにしてみるのもどうでしょう。

 家族が知らないうちに、電話などで注文してしまうなど家族が把握できないことも起こりますが、いつも利用しているお店などには、本人の注文には応じないよう協力をお願いするのもひとつの方法です。

悪徳業者には注意
 高齢者を狙った悪徳業者からの勧誘は、家族が早めにキャッチすることが重要です。対処の方法としては、クーリングオフや、消費者センターへの相談ということになります。

 本人と離れて暮らしていたり、高齢者だけの世帯などで不安があれば、成年後見制度を利用して、法的に財産を守ることも考えましょう。



 自分への自信が揺らぐと、それを守ろうとして、ときとして頑固になることがあります。禁止されたり叱られたりすると、年長者としての自尊心から、素直に従えなくなるのは当然のことです。こちらの対応が適切でないということかもしれません。

年長者を敬う気持ちを忘れない
 認知症になっても親であり、人生の先輩です。行動を見て、尊敬できないようなこともあるかもしれませんが、人格を傷つけるような言動はつつしむようにしましょう。

サラリと受け流す
 感情的になるとこじれるばかりですので、サラリと受け流すのもひとつの方法です。こちらが居丈高にでれば、相手は頑固になるばかりです。優しく対応すれば相手も違った顔をみせます。



 あまり外にでない生活が続くと、「朝おきて夜眠る」という当たり前の生活ができなくなってきます、アルツハイマー病の人はどうしても外にでる機会が少なくなってしまうので、夜眠れないという人が多くいます。

ストレスや不安を取り除く
 健康な人でも、ストレスがたまると貧乏ゆすりをしたり、部屋の中を歩き回ったりすることがありますが、アルツハイマー病の人も同じことです。興奮して歩き回ったり、徘徊したりする場合は、ストレスや不安をなるべく取り除くことです。

 具体的には、昼間一緒に散歩に連れ出してからだを適度に疲れさせるのが効果的です。太陽の光を浴びることは、体内時計を調整する働きがあり、生活のリズムを取り戻すのに役に立ちます。



 アルツハイマー病の初期には、やるきがなくなり、うつ状態があらわれることがあります。これは記憶力が低下したことや判断力が衰えていくのが自分でもわかり、将来を悲観して気持ちが落ち込むためです。

自信をなくすような言葉はかけない
 「最近もの忘れがひどくなったんじゃない」などの、なにげない言葉にも、うすうす気がついている本人へのダメ押しになってしまいます。言葉使いには気をつけるようにしましょう。

できることをやってもらう
 自分の能力が低下していることを自覚していて、以前のように上手にできないという体験をするのはつらいものです。得意だったことよりも、簡単でも達成感がもてるようなことをやってもらうようにしましょう。

「がんばって」と言わない
 気分が落ち込んでいるときに、励ます言葉は禁物です。つらい状態を理解して、受け止めてあげるようにしましょう。

 うつ病とアルツハイマー病のうつ状態の区別はわかりにくいのですが、アルツハイマー病のうつ状態は薬で改善する可能性もありますので、お医者さんに相談することをおすすめします。




 アルツハイマー病になると不潔でいることが平気になる人が多くいます。また、からだを清潔に保つことや、おしゃれにも無関心になる人が多いようです。

 からだの自由がきかなくなって面倒になる、清潔やおしゃれをすることに意味を感じなくなるなどがその理由として考えられます。

抵抗のないことから、少しずつ提案する
 まず、からだをふいてあげる、髪の毛を洗ってあげる、そういう提案から始めてみましょう。服の脱ぎ着が面倒なことが理由でお風呂に入りたがらないのであれば、下着のまま入浴するといのもひとつの方法です。

 してはいけないのは、服を無理にぬがせてお風呂に入れることです。洗濯物のように扱われるとお風呂がますます嫌いになってしまいます。

 入浴するという基本的な生活習慣がおろそかになるとアルツハイマー病は悪化していきます。「お風呂にはいることは気持ちがいいことだ」という感覚を、忘れさせないようにしなければなりません。

入浴後に楽しみを用意する
 「ビールを冷やしておきますよ」「おいしいアイスクリームがありますよ」などと、入浴後が楽しみになるような工夫をしてあげることもひとつの方法です。



 手足やからだに運動障害がないにもかかわらず、行為や動作の手順がわからなくなることを「失行」といます。

 失行には「服の着方がわからなくなる」「道具の使い方がわからなくなる」などいくつかのタイプがあります。本人は変な着方をしていても、自分ではおかしいと気づくことができません。


着替えるときに付き添う
 服が着られなくて困っているというようなら、まず優しく声をかけ、そばで見守りながら、指示を出してあげましょう。つまずいた部分をクリアできると、あとは自分で着られることもあります。

 ずっと付いていられないときには、着る順番に1枚ずつ準備しておくといいでしょう。必要以上に手を貸さずに、本人が自分で着られるように前もって用意をしてあげることも大切です。




 アルツハイマー病が進んでくると周囲の物事の判断ができなくなる「見当識障害」というのがあります。久しぶりに会いに行ったのに「どなたさまですか」などと言われるとショックを受けます。

 しかし、「しっかりしてよ、私がわからないの」などと言い返すと、本人はますます混乱してしまいます。

 見当識障害はアルツハイマー病によくある症状です。その場合は、間違えている人になりきって相手をするなど、話を合わせてあげましょう。話をしているうちに記憶がもどってくることもあります。

 また、少しでもわかる間にできるだけコミュニケーションを取っておくことも大切です。離れて暮らしている方はなるべく頻繁に顔を見せて忘れにくくしてあげるようにします。


息子の顔がわからない
 久しぶりに会った息子を見て、「この人はだれですか」と、怖がったり、怒ったりすることもあります。

 これは、若い頃や子どものころの自分に戻ってしまうというアルツハイマー病の特徴的な症状です。

 自分は若いころに戻っているわけですから、大人になったわが子を見ても、だれかわからないというわけです。「こんなに一生懸命世話をしているのに」とがっかりしないようにしましょう。

否定したり責めたりしない
 ほかのケースと同じように、認知症の人の言うことを否定せず、話をあわせることが基本です。顔を覚えていないことを責めて不安にさせてはいけません。

 知らない人だと思って怖がる場合は、悪い人ではないことを説明して安心させましょう。



 母が汚れた下着を自分のタンスの中に隠していたのを発見した。それは家族にとってはショッキングなことですが、本人にとってはちゃんとした理由があります。

 失敗したことが恥ずかしく、それを人に知られたくないので、とりあえず目に触れないところに隠すのです。そして、隠したことを忘れてしまって、家族がびっくりするほどの汚れ物が出てきたりします。


責めても叱ってもダメ
 失敗したという気持ちが大きいので、本人の気持ちや、プライドを傷つけるようなことは避けましょう。心の傷になると、失敗を恐れて頻繁にトイレに通うようになります。

こっそり片付ける
 叱ったり、言ってきかせても効果はありません。何も言わずに片付けるのが一番の方法です。衛生上の問題もありますので、隠しそうな場所をときどきチェックするようにしましょう。




 アルツハイマー病になると。方向感覚がなくなり、見慣れた景色をヒントに間違えずに歩くということができにくくなってしまい、迷子になってしまいます。

 また、時間の感覚も薄らいでいくために、長時間歩いたという感覚がなくなり、途方もなく遠くまで行ってしまうこともあります。


周囲の人々の力を借りる
 本人に住所や名前、電話番号を書いた札を持ってもらったり、目立たないように衣服に縫い付けるなどして、不審に思った人に通報してもらえるようにしておきます。

 また、普段から警察や町内の人々に事情を説明して協力をお願いしましょう。本人がよく出かける方角や立ち寄るところを把握しておくことも大切です。最近ではGPS付きの携帯電話を持たせる方法もあります。


出入口を工夫する
 知らない間にでかけてしまうような人には、出入口を工夫しましょう。「手の届かないところに鍵をつける」「ドアに鍵をつける」「センサーを設置する」など、出入口を工夫してみるのもいいでしょう。

一緒に散歩する
 外出を頭ごなしに抑止するのではなく、散歩につきあってあげると、本人の心も満たされるのではないでしょうか。



 デイサービスに限らず、外出全般を嫌がる傾向は男性に多いようです。体力が落ちてきて、動くのが億劫ということや、集団生活がストレスになるという人もいるでしょう。また、施設へのちょっとした不満からいくのを嫌がることも考えられます。


誘い方に工夫を
 いやいや行くのはストレスを増すことになります。最初のうちは家族が一緒についていき、半日利用から始めます。その後、徐々に時間を長くしてというやりかたもあります。

 また、施設の職員に誘ってもらうと、すんなりと行ってくれることもあります。親しい人が同じ施設に通っているということで、行きやすくなることもあります。

 施設を決める前に本人が過ごしやすいところかどうかをリサーチしておきましょう。

実際に見せてもらう
 仲間ができて楽しい時間をすごせるなら、誰でも行きたくなるものです。その施設がどういうサービスを提供しているか、実際に見せてもらうといいでしょう。

 また、本人が施設に不満を持っていることも考えられますので、その理由をよく聞き出して、ケアマネージャーに相談してみてください。



 アルツハイマー病になると散歩に行くたびに、何か拾ってくる人がいます。判断力が低下して、捨てられたものでも、もったいないと思ってしまうのでしょう。ときにはぬれた物や、においがするものを押し入れなどにしまいこむこともあります。このようなことがしばしば起こると家族のストレスも増大します。

こっそり捨てる
 頭ごなしに起こったり、目の前で捨てるのはやめましょう。本人にとっては価値のあるものなのです。この気持ちをできるだけ傷つけないよう、本人に気づかれないよう、こっそり捨てるのがコツです。

やめさせようと思わない
 こういった行動は病気によるものなので、やめさせることはできません。介護する人も必要以上に神経質にならずに「またやっている」と、軽くうけ止められると楽になります。



 タンスの物をあれこれひっかきまわす。ゴミ箱をあさるなどの行動は、家族にとってはストレスになります。

 しかし、本人にはなにか理由があるものです。タンスや引き出しの中はシンプルでおおざっぱに「この段は下着、きちんとならべなくてもOK」と、介護する側も割り切ると、気持ちが楽になります。シワになると困る物は、ハンガーにかけるなどして、たたむ手間をはぶきましょう。

 また、ゴミは外置きのダストボックスなどを用意して、本人の目には触れないところに置きましょう。各部屋のゴミはためないで、こまめに集め、口に入れると危険な物は特に注意して捨てるようにします。



 アルツハイマー病が進むと、トイレ以外のところで放尿したりすることがあります。これにも本人には言い分があります。「トイレを探していたけど見つからなかった」「あそこはトイレだろう」というものです。

「ここはトイレではありません」の張り紙をする
 ドアに大きく「トイレ」と書いて貼るのもいいですし、生活の場の近くにポータブルトイレを置くのも手です。いつも同じ場所でやるなら「ここはトイレではありません」と紙に書いて貼ってもいいでしょう。

サインを察し、声をかける
 尿意があれば、必ずそれなりのサインがあるはずです。その人なりのサインをつかんでください。時間を見計らって声をかけるのも大切です。

 また、大便の場合なら、本人の排泄パターンをつかみ、タイミングよくトイレに誘うようにしましょう。




 病気になる前には自制できていたことが、認知症のためタガが外れてしまった状態になります。しかし、大声や暴力にも必ず理由があります。介護する側でその原因をつくっていることも少なくありません。

 例えば、「いきなり声をかけた」「体に触った」「無理強いしている」「痛みがあるのに動かされた」などということがあっても、口でうまく説明できずに、暴力的になったり大声で訴えたりということになってしまいます。

力で抑えこまない
 介護する側が叱ったり、力で制止すると火に油を注ぐことになりかねません。まず、こちらが落ち着くことが大切です。

原因を考え、非があれば謝る
 介護するときは行動する前に、必ず声をかけて一息おいてからにします。本人の意思を無視していないか、尊厳を傷つけていないかという自省心をもって介護にあたれば、こういったことを減らすことができます。

 また、しばらく時間をおいて声をかけると、先ほどのことはすっかり忘れていて、ことがすんなり運ぶことがあります。



 判断力や記憶力が低下したといっても、自分を守ろうとする本能は残っているので、自分に不利なことは認めたくないのです。

 失敗に対して強い口調で責めることはよくありません。見え見えのウソを引き出してしまうことになります。

 取り返せない失敗には目をつぶって、気づかないふりをするのがいいでしょう。または、「いいの、いいの」と軽く受け流してあげると、本人も気が楽になります。

 また、作り話には「今日のウソは50点くらいかな」くらいの遊び心で受け止められるようにしたいものです。介護する人も、ときとして「便利なウソ」で切り抜ける技を身につけましょう。



 アルツハイマー病になると記憶力の低下から、物を置いた場所を忘れます。自分が忘れたという自覚がなく、「誰かが盗った」という考えになりがちです。身近で介護する人が犯人あつかいされることが多く、感情的になり、溝ができてしまうこともあります。

否定したり叱ったりしない
 叱っても効果はありません。むしろ自体を悪化させます。ですので「そうなのね、どこかに置き忘れているかもしれないので一緒にさがしましょう」といって、まず、そのまま受け止めましょう。そうしているうちに本人の気持ちが落ち着いてきます。

 また、「財布を取られた」と騒ぐことが多いのですが、こんなときのために、実際にお金を少しいれておいた財布を別に用意しておき、ある程度探しても見つからないときには、「これですか」といって差し出すと、案外納得してくれます。

 「一休みしてお茶でも飲みましょう」「今度、代わりの物を買いにいきましょう」などと声をかけ、気持ちをほかのことに向けることで落ち着くこともあります。



 言ったことを忘れてしまうため起こることですが、聞く方としてはうんざりしてしまいます。でも、本人はくり返し言っているという意識はなく、前に言ったこと自体を忘れているのです。

何度でも教えてあげる
 同じことを何度も尋ねる場合は、なにか不安を感じていいて、確認したいという気持ちなので、その都度答えてあげましょう。

 「さっき言ったでしょう」などときつく言われると、本人はなぜそんな態度を取られるのかわからず、不愉快なことを言われたと思います。そして、言った相手に反感をもつようになります。

聞き流す訓ことも必要
 いちいち目くじらをたてていては、介護する方も疲れてしまいます。無視するのではなく、上手に聞き流してストレスをためないようにしましょう。



 「ごはんの支度をしなければ」「子どもの世話をしなければ」といって家を抜け出すことは、認知症の人によく見られます。

 「うちに帰る」というのは、アルツハイマー病が始まって、自分がどこにいるのかわからなくなって、知らないところにいると思っています。ですのでとても不安なのです。

 アルツハイマー病の人にとって「自分の家」とは、自分が元気で幸せだったころに住んでいた家や場所のことです。夜になって不安が高まると、幸せだったころの自分にタイムスリップして、「うちに帰る」と言って外にでしまいます。

とりあえず引き止める
 「今夜はもう遅いですから、泊まっていってください」「タクシーを呼びますから、お茶でも飲みながら待ちましょう」などといって引き止めると、しばらくして気持ちが落ち着くことがあります。

不安な気持ちを理解する
 「また始まった」という思いに駆られるかもしれませんが、力ずくでは引き止められません。本人の不安な気持ちに寄り添う姿勢があると相手にも伝わります。

 それでも出ていってしまうときには、しばらく散歩につきあいましょう。「うちに帰る」と言ったことを忘れて、素直に帰宅することも多くあります。




 便をいじることを「弄便(ろうべん)」といいます。アルツハイマー病の人は、便をいじって遊んでいるわけではありません。オムツの中の便に不快感があるので、どうしたらよいかわからず、いじってしまいます。

 認知症が進行して、正常な人の持っている「汚い」という認識が働かなくなると、このような行動をすることがあります。

安易にオムツを使わない
 まず、安易にオムツを使わないことを心がけましょう。トイレで排泄することは、人間にとって基本的な行為です。これができなくなると高齢者にとっては大きなストレスになります。

 アルツハイマー病を進行させないためにも、タイミングを見てトイレに誘導し、トイレで排泄する習慣を大切にしましょう。

 介護用のオムツには、簡単に中に手を入れられないタイプのものもありますが、この使用もなるべく避けたいところです。不快感で弄便をしているのですから、汚れたオムツはなるべく早く交換するようにしてあげましょう。



 アルツハイマー病の症状として、時間や場所、周囲の状況がわからなくなる「見当識障害」があります。そのため、季節がわからなくなって、夏なのに厚着をしたり、椅子をトイレと間違えて座り、排泄をしたりすることがあります。


大きなストレスがきっかけに
 見当識障害はアルツハイマー病の初期の段階から多くみられるものです。アルツハイマー病のきっかけとして、何か大きなストレスを受けた場合に発症することが多くあります。大切な人を亡くした、病気で入院した、生活環境が大きく変わった、などです。

 ですから、異変を感じたときは、何か大きなショックを与える出来事があったのかもしれません。それ以上のショックを与えないように注意しなければなりません。

 「変なことを言っている」と思ってもいちいち指摘せずに、軽く聞き流すようにしましょう。また、環境を変えることはできるだけ避けなければなりません。

 故郷でひとり暮らしをしている親を、息子の家に引き取るという場合もよく検討が必要です。




 年齢を重ねていくと、ほとんど人が、「とっさにものの名前が出てこなくなる」という経験をします。これは脳の機能が低下していくために起こりますが、アルツハイマー病ではこれがさらにひどくなり、「みそ汁、せっけん、トイレ」など、日常的に使う言葉も出てこなくなります。

言葉にださせることを心がける
 アルツハイマー病の進行を遅らせるためには、本人にことばを口にださせることが大切です。「みそ汁のこと?」「そうそう、みそ汁ね」などと応じて、ものの名前を認識するきっかけをつくりましょう。

 例えば、「あれを取ってくれますか」と、言われたときには、「ああ、あれね」というのではなく、「ティッシュのこと?」と聞き返します。同時に話す機会を増やすことで、脳と舌を刺激するようにしましょう。



プライドを傷つけないように対応を
 年をとると、どうしてもトイレに間に合わないということがあります。誰だって「人に下の世話をされるようにはなりたくない」とおい気持ちがあります。

 アルツハイマー病になっても「恥ずかしい」という感情も自尊心もあります。本人のプライドを傷つけないようにさりげなく始末をしましょう。

トイレのサインを見落とさず声をかける
 よく観察していると、その人なりのクセや素振りで尿意や便意があることを察知することができます。それを見落とさずに、事前に「トイレにいきましょうか」などと声をかけるようにします。

 また、記録をつけておくと、その人なりの排便や排尿のサイクルがわかってきます。

時間を決めて声をかける
 アルツハイマー病が進むと、尿意や便意が分からなくなることがあります。そうなった時には、時間を決めて声をかけ、トイレに行ってもらいます。

トイレの場所を近くにする
 トイレが遠くにあったりすると失敗につながりやすくなりますので、トイレの近くの部屋に移るのがいいでしょう。また、夜間に間に合わないというときには、ポータブルトイレを考えましょう。

 トイレのなかで体調不良を訴えることもありますので、鍵は外からも開けられるものに替えておいた方がいいでしょう。