依存症の特徴と治療

依存症の特徴と治療

薬物依存症

薬物依存症とは
 薬物にも様々な種類がありますが、薬物を使うことで快感を得ることができ、その快感を得るために、また欲しくなる薬物があります。このような薬物を依存性薬物といいます。
 依存性薬物はいくつかの種類に分けられますが、使用が認められている、喫煙(ニコチン)や飲酒(アルコール)のような嗜好品と呼ばれているものもあります。また、せきどめ薬などの市販薬、睡眠薬、抗不安薬のような処方薬も含まれます。それに対して、違法薬物といわれる、大麻、覚せい剤、コカイン、シンナーなどがあります。これらの薬物は所持しているだけで捕まってしまいます。
 違法薬物は継続的に使用することによって深刻な依存症が引き起こされます。薬物を使い始めるきっかけは単なる好奇心だったり、嫌なことを忘れたいからという気持ちからだったりするようですが、一度経験すると、再びその快感を味わいたいという強い欲求が起こり、いつしか自分の意志では薬物使用をコントロールできなくなってしまい「止めたいのに、やめられない」状態に陥ります。これを「薬物依存症」といいます。
 違法薬物は中枢神経に直接作用し、快感や、陶酔感をもたらすもの、心の苦痛が軽くなるもの、幻覚症状を起こすものなどがあり、薬物依存が進行するとその薬物がないといられなくなり、借金や犯罪など、どんなことをしてでもその薬物を手に入れようとするようになります。その結果、幻覚や妄想などを伴う中毒性精神病や内臓障害が起こり、その中毒症状などから、放火や殺人といった犯罪などにも手を染めることになり、経済生活の破綻と同時に、家族や友人との人間関係が壊れてしまい、心身に異常をきたし人格は崩壊してしまいます。薬物依存症は回復する病気ですが、自分ひとりでは、どうにもなりませんので専門医や相談機関に相談することが必要になります。



薬物依存症の症状
薬物依存症では、使用する薬物によって症状が異なります。ここでは2つに分け、有機溶剤(シンナー、トルエン、ボンド)と覚せい剤の症状をみてみます。

有機溶剤(シンナー、トルエン、ボンド)
 有機溶剤は、吸引で使用されます。吸引直後は頭がぼんやりし、幸福感や体が浮いているような浮遊感をもたらし、周囲の状況を誤認して暴力をふるうこともあり、犯罪につながることもあります。
 症状としては、足がふらつき、ろれつが回らなくなります。脳の萎縮、手足の知覚障害、肝臓や腎臓などの内臓障害、視力の低下、体重減少などが現れます。また吸引することで、空腹感や口の渇き感まで麻痺するため、急性の脱水症状や、栄養失調になることもあります。また、覚せい剤よりも少ないとはいわれますが、手の震え、不眠、悪夢、吐き気、錯覚、幻覚、妄想などが現れます。

覚せい剤
 吸引や注射、内服などで使うことにより、初期は幸福感や陶酔感、疲労感の軽減、食欲不振、刺激に過敏などの症状が現れます。続けるうちに、不安や恐怖感、同じ動作を繰り返す、意味不明の言葉を話す、突然周囲の物をなげたり、叩いたり、人に暴力を振るうようになります。睡眠時間が少なくても眠くなりませんが、薬が切れた時の疲労感はその分強く現れます。

 身体的症状としては、顔色が悪くなり、呼吸、脈拍は速くなり、血圧が上がります。また寒気、吐き気、嘔吐、食欲不振などが現れます、大量に注射すると急性中毒症が現れ、呼吸抑制、全身のけいれん。昏睡状態から死に至ることもあります。覚せい剤は有機溶剤中毒よりもはるかに強く、不安、無気力、脱力感、不眠、憂うつ、少しのことでカッとなる、発汗、悪寒、吐き気といった不快感が現れます。幻覚や妄想が強く出ることもあり、こうした不快感がつらいために、再び薬物に手を出すという悪循環が続き、中毒性精神病へと移行していきます。


薬物依存症の治療
 薬物依存症になると、退院後や通院治療中も、再び薬物に手を出し発覚してやめることを誓う、こんなことの繰り返しです。薬を欲しがり、泣いたり怒ったり、周りの人ははがゆい思いをしますが、薬物さえやめれば、元の健康な人間にもどり、その人の人生もリセットされます。
薬を完全に体内から抜くためには、薬が手に入らない環境におくことが必要ですから、基本的には入院し、離脱症状を緩和するベンゾジアゼピン系などの薬物療法を受けながら、乗り越えていきます。退院後は、集団療法、家族療法などを続けながらの治療となります。
 治療のポイントとしては、薬が悪いことであるという認識があるのに、薬の魔力に勝てないというところです。薬物による依存は、想像を絶するほど強いものです。そのため、本人だけでの治療は困難です。家族が薬物を使用していることを知ったなら、どうしたら元の健全な状態に戻るのかを冷静に考えて、精神科医や精神保健センターなどの専門機関に相談し治療に導くための方法を考えます。また、家族にも問題のあることも多いので、本人だけでなく、家族全員の問題として捉えることが重要です。



薬物問題の相談機関
薬物問題について相談できるサポート機関です。自分の身の周りの人が薬物の問題を抱えていたら、まずは相談をしてみてください。薬物依存症についての正しい知識を得ることで、対処の方法が見えてきます。

全国公立女性相談所
女性相談所はさまざまな悩みを抱えている女性の相談相手となり、問題解決にあたり女性が幸せな社会生活・家庭生活をおくれるよう援助する公的な機関です。

全国いのちの電話
さまざまな悩み、心の危機に直面しながら、身近に相談できる相手がなく、孤独の中にいる人たちに対して再び生きる勇気を見出していかれるよう、電話で相談を受けています。名前をいう必要はありあません。

全国精神保健福祉センター

各都道府県・政令指定都市が設置する、こころの健康の向上と精神障害者の福祉の増進を図るための専門機関です。