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拒食症・過食症(摂食障害)とは

 摂食障害の治療はどのように行われる

 治療はどこで
摂食障害の治療は一般には、心療内科、精神科、小児科などで診察してもらいます。最近では摂食障害に対する一般の知識が普及しているので、ごく早い時期に精神科や心療内科で適切な治療が受けられるようになりました。
 拒食症の人は、生理がないということから婦人科を受診したり、体重減少のために内科を受診したりしたときに、摂食障害がわかり専門医を紹介されることも多いようです。
 また、摂食障害と思われるが疑わしい、どこの病院を受診したらいいかわからないといった場合には、保健所など公共機関の相談窓口を利用するのも一つの方法です。無料健康相談などの制度があり、病院を紹介してもらうこともできます。



 まず体力の回復をする
治療には大きく分けると身体的治療と心理的治療があります。心に問題があるため起こってくる病気ですから主体となるのは心理的な治療です。心理的療法は体力が戻り、普通の生活にある程度たえられる状態になってからでも遅くはありません。まず、患者さんの命を守ることが最優先にないります。
 心理的な治療は身体的な症状がある程度回復しないと行えません。この病気では常に心とからだの両方をみて治療を行うことが大切です。重い低栄養状態がつづいて体力が消耗している患者さんには、思考能力が鈍っている場合があるので、まず、35キロ程度まで体重を増やすように栄養補給に務めます。



 体重が30キロを切ると命の危険
摂食障害は、生命を維持する基本である食べるという行為にかかわる病気だけに、著しいやせなどは身体にもさまざまな問題が生じます。体重の減少がいちじるしい場合、特に注意しなければならないのは低血糖発作です。血糖値が低下するために意識障害やけいれん発作を起こすもので、しばしばみられる症状です。発見が遅れると生命も危険になります。発作を起こしたときにはすぐに病院に運び、摂食障害であることをつげます。

身長によっても違いますが、体重が30キロを切ると低血糖発作を起こしやすくなります。やせが目立ってくるとほとんどの人に貧血が認められます。かだらは酸素不足になり、疲れやすい、めまいを起こす、顔色が悪いなどさまざまな症状があらわれてきます。また、やせて極端に栄養状態が悪くなると、脳が萎縮することがあります。脳が萎縮すると思考力および、とくに記憶力の低下が見られます。



 入院が必要な場合
一般には体重が35キロ以下になったら入院して治療を行う必要があります。拒食症では食事を受け付けなくなることがありますが、この場合はすぐに入院をする必要があります。過食症の場合は入院を必要とするケースはそれほど多くありませんが、本人の混乱が強く、家庭での対応の限界を超えるような場合は入院の対象となります。
 入院は患者さんが拒否する場合は強制的に入院させても効果がありません。体重が30キロ以下になって衰弱がいちじるしい場合を除いて、患者さんの意思を尊重することが大切です。
 治療を受ける場合は、あらかじめどんな治療を受けるのか説明を受け、患者さんが納得しておく必要があります。



 家族のサポート
家族も、本人の心理の理解やサポートの仕方を中心に継続的に学んでいきます。拒食症の場合は、やせの異常心理に多分に支配されているため、身体療法を抜きにした精神療法だけでは限界があります。摂食障害は家族と一緒に治療していかなければならない病気なので、治療には家族の力が必要です。ことに母親のサポートは、本人の年齢に関係なく必要です。
 大原則は患者の信頼を裏切らないようにすることです。患者さんは、治療によって自己主張をはじめますが、最初はごく幼稚なもので、相手の対応次第で再び殻に閉じこもってしまうことがあります。家族がいっしょに治療をしていくうえで次のようなことに注意が必要です。

励まさない
励ますことは普段日常でも良く行われることですが、病気が治りかけて立ち直ろうとしている患者さんを見ると、つい激励したくなります。しかし、激励されることは患者さんにとって大きな負担となります。落ち込んでいる人は、自分が落ち込んでいることをよく知っています。よくわかっているのに改めて「がんばれ」と言われたら、不満と憎しみだけが生まれます。患者さんにしてみれば、励まされている自分が、励ましている人の要求にこたえられないということは、自分がダメな人間であるからと思い、さらに落ち込んでしまうのです。

あせらない
もう一息で治るということがわかれば、できるだけ早く治るようにしてあげたいと思うのが人情です。しかし、治療の途中で患者さんが立ち止まれば家族もいっしょに立ち止まって、患者さんが動き始めるのを待つくらいのゆとりがなくてはなりません。

強制しない
食にしても、生活態度にしても、何ごとも強制してはいけません。患者さんは命令されると、発病以前のように素直に従うのではなく。反抗心をあらわにします。これは「もう誰かのいいなりにはならない」という自己主張なのです。これらはみな患者さんとの信頼関係を築く上で不可欠なことです。



 主治医は安易に変えない
摂食障害は特殊な病気ですから、この病気の治療に慣れている医師でないと治療が難しいという面があります。摂食障害の治療には、年単位の期間がかかることがあります。そのため、患者さんは治療の途中で、治療の効果が不安になったり、治療者に裏切られたと感じ、あちこちの病院を受診したりして、別の病院に移ることがあります。
 摂食障害は治るまでにかなりの時間がかかるものです。精神科の治療は、そもそも本人の治す力を周囲の人たちと一緒に、治療者がサポートしていく作業であり、地道な努力が必要で、長い時間がかかります。すぐに結果がでないからといって、簡単に治療者を変えるのは好ましくありません。転院すると、検査などを最初からやり直さなければなりませんし、場合によってはこれまでの治療の積み重ねがすべて無駄になってしまいます。
 いったん主治医を決めたら、安易に変えないという姿勢が大切です。そのためには疑問があれば徹底して質問し、患者さんも保護者も納得して治療を受けなければなりません。そうすることによって、治療者、患者さん、保護者の信頼関係が成立します。この信頼関係の構築こそが治療への近道であることを理解していただきたいと思います。



 効果がある精神治療薬

過食で混乱している場合などではカウンセリングだけでは限界があるので、薬物が必要となることがあります。過食によるうつ状態やイライラには、精神安定剤や抗うつ薬などの薬物が高い効果を期待できます。抗うつ薬としては、SSRI(選択的セトロニン再取り込み阻害剤)と呼ばれる薬物がよく使われます。これにはパロキセチン(商品名:パキシル)やフルボキサン(商品名・ルボックス)などがあります。脳内の神経伝達物質に直接作用してうつ状態を改善します。
 これらの抗うつ薬は摂食障害の治療に用いられます。また、精神安定剤はイライラの軽減に有効です。精神安定剤には、抗不安薬と抗精神病薬があり、興奮が強い場合は抗精神病薬もよく使われます。