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家庭での接し方

 
 名前を呼ばれたら振り向くことを教える
 出来たらほめてあげる
 問題行動はやめるまで無視する
 絵カードやシールを使う
 部屋や場所ごとの役割を決める
 スケジュールを立て、行動しやすくする
 方法や手順を段階に分けて教える
 



名前を呼ばれたら振り向くことを教える
 名前を呼ばれたら、呼んだほうを振り向く。ふつうの子どもにはごくあたりまえのことですが、自閉症の子どもにはこれができません。

 名前が自分をさしている「符号」であり、名前を呼ぶことで、その人が自分になにかを伝えようとしているという意図がわからないからです。しかし、そういった理屈はぬきに、名前を呼ばれたら振り向くというルールを覚えさせるということは可能です。

 最初のうちは、名前を読んでも知らん顔を続けるかもしれませんが、根気よくあきらめないことです。子どもに指示をしたり、用事を伝えるときは、必ず名前を呼ぶようにします。


出来たらほめてあげる
 名前を呼び続けるうちに、何回かに1回は振り向くようになるでしょう。うまくできたときにはほめてあげます。

 ことばが理解できない子にはごほうびが効果的です。お菓子でも、アニメのキャラクター人形でも、その子が喜ぶ物でかまいません。
このように、名前を呼ばれたときに振り向くと「得をする」と子どもにわからせることがポイントです。

 子どもが、自分になにか用事があって呼んでいる、ということがわからなくても、振り向けば相手との関係がよくなることを体得できるように、根気よく教えることが大切です。もし、うまくできなくても叱ったりはしないようにしてください。



問題行動はやめるまで無視する
 問題行動がなかなかおさまらないときは、注意したり、叱ったりするのではなく、無視するようにします。たとえば、自閉症の子どもによくある「つば吐き」という行動があります。あたりかまわずつばを吐き散らすものです。

 つば吐きをする原因は、親の関心を引くためとか、勉強や作業をしたくないとき、やることが退屈なときなど、いろいろな理由がありますが、特に親の関心を引くということが多いようです。

 その場合、「やめなさい」とか「ダメ」とか言うと、「おかあさんがかまってくれた」と思って、ますますその行為を続けます。

 こうした行為を減らすには、子どもが飽きてやめるまで、見てみぬふりをし、やめたらほめるようにすることです。このとき大切なのは、つば吐きをやめることがよいことだとわかるタイミングでほめるようにします。


絵カードやシールを使う
 自閉症の子どもは、音は取り込みにくいのですが、視覚的には敏感です。そこで、子どもになにか話しかけるときは、声で話しかけるのではなく、絵や写真、シールなどを用いると効果的です。

 たとえば、「ぼうしを持ってきなさい」という代わりに、ぼうしの絵が描かれたカードを見せます。声をかけても気がつかなかった子どもが、絵カードを見せるとすぐに理解して反応することはよくあります。

 おもちゃなどを片付けさせる場合にも、どこに人形をおき、どこに積み木をしまうのかを、ひと目でわかるように、置くべきところに絵やシールを貼っておきます。そうすれば子どもが迷わずにすみます。

 こうした意思表示の仕方を覚えることで、子どもにコミュニケーションをはかろうとする気持ちが芽生えてくることもあります。



部屋や場所ごとの役割を決める
 一般的な子ども部屋は、勉強机に、ベッド、本棚やおもちゃなどが並んでいます。ひとつの部屋で勉強も読書もおもちゃ遊びもでき、夜はそこで寝ることもできます。

 しかし、このような子ども部屋は、いわゆる自由な空間で、自閉症の子どもにとっては最もふさわしくありません。いつ、何をすればよいのかわからず混乱してしまいます。

 逆になにをすべきか決まっている場所であれば、落ち着いてものごとに取り組むことができます。

 たとえば、ひとつの部屋のなかを区切って、それぞれの空間に「○○をするところ」と決まりをつくります。この机のうえで勉強する、別のテーブルでは絵を描く、というように場所ごとに用途を決めて、意味づけをするようにします。

 こうすることで、混乱することも少なくなり、過ごしやすくなります。


スケジュールを立て、行動しやすくする
 自閉症の子どもは時間についてもこだわりがあります。これからどれくらいの時間、何をするのか、そのあとはどこに行ってなにをどれくらいやるのか・・・。そういったスケジュールが決まっていないと安心できません。

 たとえば、朝起きたら歯をみがいて、顔をあらい、食卓について朝食をとる、といった流れがよくのみこめません。また、洗顔や朝食には、それぞれどのくらいの時間をかければよいのかも理解しにくく、スムーズに行動に移すことができません。

 そこで、子どもの理解をうながすためには、1日のスケジュールを作成して、決まった場所に貼っておくとようにします。ことばがわからなければ絵をつかい、時間をしめす数字がわからなければ時計に絵で示します。

 このように、いったんスケジュールが決められ、それにそって行動出来ると、混乱せずに1日を過ごすことができるようになります。

 しかし、スケジュールに変更があったときは、前もって子どもに伝えておく必要があります。直前になって知らせると、子どもにも心の準備ができていないため、パニックにおちいるおそれがあります。


方法や手順を段階に分けて教える
 自閉症の子どもは、ひとつひとつのことはできても、最後まで通してこなすことが難しい場合があります。そのようなときには、手順を細かいステップに分けて1段ずつ絵や写真などを使って示すようにします。

 たとえば、洋服を着るという一連の動作を覚えさせる場合、まず洋服を正しい位置に置き、取り上げてから、最初に頭にかぶせて通し、次に片方の腕、さらにもう片方の腕を通し、最後に洋服のすそをもって引き下げるというステップをふみます。

 この全部の行程を最初からすべてひとりでやらせるのは難しいので、まず、ワンステップをひとりでできるようにして、残りのステップは大人が介助にてあげるようにします。そして最終的には、洋服の置き方から着終わるまでを、ひとりで出来るようにしていきます。