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自閉症の子どもの特徴

 
 人とコミュニケーションを取ろうとしない
 ことばの理解が遅い
 音や光に敏感に反応する
 同じ行動をくり返す
 相手の気持ちや立場を理解することができない
 変化についていけない
「あいまいなこと」が理解できない
味やにおいに対するこだわりがある
いきなりパニックになることがある
特殊な能力を発揮する子どももいる
 



人とコミュニケーションを取ろうとしない
名前を読んでも振り向かない
 子どもの名前を呼ぶと、たいていの子どもは、元気よく返事をしたり、恥ずかしがったりします。しかし、自閉症の子どもは名前をよばれても返事をしません。また、呼ばれた方を見ることもありません。

 それは、知らない人でなくても、身近なおかあさんであっても、振り向いたり、視線をあわせたりすることがほとんどありません。

 自閉症の子どもは、親であれ、他人であれ、人という存在に関心が少ないため、だれかから声をかけられても反応しようとしないのが特徴です。


おかあさんの顔色を気にしない
 ふつうの子どもは少し大きくなってくると、親の顔色を気にするようになります。たとえば、子どもに「おかあさん、やさしい?」と尋ねると、ふつうはとなりにいるおかあさんの顔色をちょっとみてから「うん」というように答えます。

 これは、自分の答えによっておかあさんがどのような反応をするだろうか、ということが気になるからです。

 このように子どもはふだんから「自分がどんなことをしたら、「おかあさんがどう思うだろうか」、「おかあさんは、自分をどのように見ていてくれるだろうか」と心配で、遠く遊んでいても、おかあさんがどこにいるか確かめておき、その顔をちらちら見ます。おかあさんの表情や視線を確認して、安心したり、不安になったりするものです。


 しかし、自閉症の子どもは、おかあさんの表情にも視線にも興味がなく、おかあさんの顔色をうかがったり、視線を気にすることはありません。それは、おかあさんそのものへの関心がないからです。

 おかあさんに関心がもてないのは、おかあさんの性格や日ごろの養育態度と関係があるわけではありません。おかあさんに限らず、あらゆる人に関心を寄せないのが自閉症の特徴です。


同年代の子どもとの付き合いが不得意
 自閉症の子どもにとっては、同年代の子どもはいちばんつきあいにくい相手です。

 自分ことを理解し、不安や緊張におちいらなくてもいいように気をつかってくれる、親や教育者なら比較的安心して過ごせますが、そういう気づかいができない子どもと過ごすことは大きな負担になります。


 「子ども同士ならわかりあえる」、「子どもはすぐに友だちになれる」という考えは、自閉症の子どもには通用しません。




ことばの理解が遅い

とばが遅い、会話をしない
 子どもが自閉症ではないかということに、周囲の人が気づくきっかけとして最も多いのが、ことばの問題です。「3歳になったのに、まだ言葉がでてこない」、「自発的に何かを話そうとしない」など、ことばの遅れを心配して健診などで自閉症とわかるものです。

 自閉症の子どもはことばがなかなか出てきません。しかし、ことばの問題は個人差があり、ふつうの子どもより遅れても、やがて少しずつ話せるようになる人もいれば、ことばを発することもなく大人になり、ずっと人と会話をしないまま過ごす人もいます。

 なぜ、ことばが出てこないのか、それは自閉症の子どもが人に興味がなく、関わろうとしないことと関係しています。ふつうの子どもはおかあさんや身近な人が発することばを注意深く聞いて、声のトーンや抑揚から、自分に何を伝えようとしているのか、一生懸命理解しようとします。

 しかし、自閉症の子どもにはそうした興味があまりありません。自分のまわりにいる人とコミュニケーションをとりたいという気持ちにならないため、その手段である「ことば」を覚えたいという欲求もないのです。


音やリズムには反応する
 人と会話をしない自閉症の子どもでも、テレビのコマーシャルで耳にする歌や、ことばをくり返して言ったり、まわりのだれか発したことばをまねて「オウム返し」をすることはあります。

 たとえば、親が「ケーキを食べたい」というと、「ケーキを食べたい?」そのまま繰り返します。しかし、こうしたことばも意味を十分に理解していないことがあります。おそらく、音の響きやリズム、イントネーションのおもしろさにひかれて、声に出して確認しているものと考えられます。

 また、人と話をするときは、ふつうは身ぶりや手ぶりを交えたり、声の調子を変えたりして、自分の感情を表現しますが、自閉症の子どもは、そうしたことば以外の伝達手段も使おうとしません。


自閉症のクレーン現象
 自閉症の子どもは、指差しをしたり、ほしいものがあるとき、ことばで「あれを取って」ということはありません。その代わり、ほかの人の手をつかんで、取ってほしいもののある場所にもっていく動作をする子どももいます。

 これを「クレーン現象」と言います。ほかの人の手を「人の一部」とはみなさず、道具のように使うことからこの名前がついています。




音や光に敏感に反応する

サイレンの音などを異常に怖がる
 だれでも、突然、大きな雷が聞こえてきたら、ドキッとして恐怖を感じますが、しかし、自閉症の子どもの場合は、ふつうの人が平気な音にもドキッとして強い恐怖感や緊張に襲われます。耐えられないときには耳をふさいで騒いだり、泣いたりすることもあります。

 自閉症の子どもの苦手な音は、たとえば、救急車や消防車のサイレンの音、掃除機の音、怒鳴り声、赤ちゃんの泣き声、犬の吠え声などがあります。

 また、ピアノなどの楽器の音をいやがり、ふつうの人にとっては不快な、窓ガラスや黒板をツメでひっかく音などには平気という子どももいます。


 これは、自閉症の子どもの聞こえ方が、ふつうの子どもの聞こえ方と違うからでなないかといわれています。

 また、自閉症の子どもは、騒音や雑音のなかから、自分に必要な音だけを聞き分けることがむずかしいといわれています。そのため、ふつうの人よりも聴覚が敏感になり、耳障りに感じる音が多いと考えられます。


視覚や触覚も敏感
 聴覚と同じようなことが視覚についても言えます。自閉症の子どもの見え方は。ふつうの人の見え方と異なっています。

 自閉症の子どもは、物を間近で見たり、手を目の前にかざして指の間からのぞき見したり、横目で見たりといった特徴のある「物の見かた」をします。

 また、木漏れ日など、チラチラする光の点滅に見入ることも多く、こうした光の刺激を好むのも、自閉症の独特の視覚によるものだと考えられています。

 そして、触覚も敏感です。特定の肌ざわりに強いこだわりをもち、同じ材質の洋服ばかりを着たがり、別の洋服を強く拒否する子どももいます。そのほか、つま先立ちしかせず、歩くときもつま先あるきしかしない子どももいます。




同じ行動をくり返す

 ひとつの動作にこだわり、それを果てしなくくり返す「常同行動」も自閉症の特徴です。たとえば、両腕をひろげて、からだをコマのようにぐるぐる回転させて、それをいつまでも続けます。ふつうの子どもは10回も続ければ、目が回り飽きてしまいますが、自閉症の子どもは飽きません。

 ジャンプが好きな子どもは、一度ジャンプを始めると、いつまでもジャンプを続けやめようとしません。見ている周囲の人が「やめなさい」といっても、まったく聞く耳をもちません。

 また、上半身を前後にゆする、手をひらひらさせる、腕をぶらぶら振る、などの動作がみられることもあります。同じ場所を行ったり来たりしたり、同じドアや窓を開けたりしめたりすることもあります。こうした動作を何度もくり返すのが特徴です。

 こうした行動は、周囲から見ると奇異に映りますが、本人は自分が他人の目にどう映っているかなどはまったく気にしていません。




相手の気持ちや立場を理解することができない

顔の表情が読めない
 ふつうの子どもは、赤ちゃんのときから、いつもそばで見守ってくれるおかあさんやおとうさんに愛着を抱き、その顔を見つめ、表情やしぐさに反応しながら成長していきます。その結果、親以外の人の表情や態度を見ても、相手の気持ちが読み取れるようになっていきます。

 しかし。自閉症の子どもの場合は、生まれつき人への関心や愛着がうすく、人の表情を読んだり、気持ちを察したりするトレーニングができていません。そのため大きくなっても、相手に対する配慮が十分にできません。

 人とのかかわりをもたないから人が理解できない。理解できないからかかわりたくなくなる、というサイクルが生まれるといえます。

 自閉症の子どもは他人とどう接したらいいかわからないため、こんなふるまいをしたら相手がどう思うだろう、ということがわかりません。つまり、自分以外の人がなにかを考えたり感じたりするということが理解できないのです。




変化についていけない

物の配置がかわってもパニックになる
 自閉症の子どもは、自分の周囲で何かが変化すると、気持ちがひどく動揺します。いつもあるべき所にあるはずの物がない、いつもの物がそこに置かれていない、といった変化に敏感に反応します。

 家のなかの家具の配置が少し変わっただけでも、そのことが大きな不安となって、もとの状態に戻すまで泣き叫んだり、パニック状態になったりします。

 また、いつも通る道が工事中で通れない、などというときも、違う道を通ることができず、泣き叫んで目的地に行けなくなってしまいます。

 電車やバスにのるときも、どの席に座るのか決めています。その席にほかの人が座っていると、押しのけで座ろうとして、周囲の人を驚かせるということもあります。


時間割の変更や行事に対応できない
 自閉症の子どもの苦手とする変化は、視覚的なものだけではありません。たとえば、学校の時間割が変更になって、いつもとは違う授業をすることになったり、運動会や学芸会、遠足など、特別な行事があると、それに合わせて行動することができません。

 「いつもと違う」ことは、自閉症の子どもをおびえさせます。自分が何をすればいいのか、このあとどこにいけばいいのか、なにをさせられるのか、予測できないことばかりで、緊張と不安でいっぱいになります。

 ふつうの子どものように、「きょうは遠足だから、教室で授業はしないで、バスにのってみんなで動物園にいくんだ」ということが、すぐに理解できません。

 ですので、自閉症の子どもには時間割などが変更になるときは、前もって本人に知らせて、どこで、なにを、どのようにやるのか具体的なスケジュールを、理解させておく必要があります。本人が理解しておけば、不安がらずに行動できます。




あいまいなこと」が理解できない

自由に過ごす時間が苦手
 自閉症の子どもは、具体的な指示を出してあげなければ、何をしたらよいかわからなくなってしまうことがよくあります。

 たとえば、学校の授業のように、何時から何時まではこの教室の自分の机に座って、どのような勉強や作業をどれだけやればよいかということがわかっている場合は、混乱することもなく取り組むことができます。

 しかし、自由に過ごしていい休み時間などになると、なにをしたらよいかわからず、不安になってしまいます。拘束も決まりもない状態は、自閉症の子どもにとっては居心地が悪く、不安をつのらせる状況をつくってしまいます。

 「なにをしてもいい」、「自分の好きなことをしなさい」などということばかけは、自閉症の子どもをひどく困惑させるもとになります。


「ちょっと」「きちんと」などが理解できない
 親に「ちょっと待っていてね」、「きちんとしなさい」、「そんなことをしてはいけません」などと言われると自閉症の子どもはどうしたらよいかわからなくなってしまいます。

 「ちょっと」はどのくらいの長さなのか、「きちんと」はどのような状態なのか、「そんなことは」どんなことなのか、それが自閉症の子どもには理解できません。

 そうした場合には、「ちょっと」ではなく「3時30分まで」とか、「きちんと」ではなく「赤い印をつけたところまで」のように具体的に指示する必要があります。

 また、省略したことばや、慣用的な言い方も通用しません。たとえば「お風呂を見てきて」というと、自閉症の子どもは、ただお風呂を見てくるだけで、水の量を確かめるとか、湯加減をみるということができません。

 その場合は「お風呂の水があふれていないか見てきて」とか「お湯が熱くなりすぎていないか手で確かめてきて」のようにできるだけ細かく言わなければなりません。

 叱る場合も「だめ」、「やめなさい」、「いけません」などの言い方は効果がありません。自閉症の子どもには、何がいけなかったのか、どうしたらよいのかを理解することができません。

 なにが悪いことで、それをやらないようにして、代わりにどのようにすれがよいのかを具体的に伝えてあげる必要があります。




味やにおいに対するこだわりがある

同じものしか食べない
 偏食が激しい子どももいます。自閉症の子どもの偏食は「にんじんが嫌い」、「ピーマンが食べられない」というように、苦手な食べ物がある、という程度のものではありません。ゼリーしか食べず、しかも、ある決まったメーカーのものしか食べない、というような極端な偏食です。

 にんじんなどを嫌う子どもは、その野菜をどんなに細かく刻んで料理のなかに入れても、口のなかの感覚で、すぐに小さな断片に気づき、吐き出してしまうことがあります。

 こうした食べ物へのこだわり拒否がなぜおこるのか、その理由はわかっていません。しかし、ふつうの子どもが成長とともに偏食が次第に改善していくように、自閉症の子どもの多くが少しづつですが、食べられる食品のレパートリーが増えていきます。


嗅覚も敏感
 嗅覚が敏感で、なんでもにおいをかいでみないと気がすまない子どももいます。これは、始めて手にした物のにおいをかいで、自分にとって不快なものでないかどうかを確かめていると考えられます。

 自閉症の子どもの場合、嗅覚にも特有の偏りがあるために、ふつうの子どもにとってはよいにおいのものが、耐え難い悪臭に感じられることがあります。

 自閉症の子どもにしてみれば、においが気になってイライラしているのに、周囲はそのことに気づかず、そうした行動を異常な行動とみなしてしまいがちです。




いきなりパニックになることがある

 自閉症の子どもは、いきなり大声をあげたり、泣き出したり、かんしゃくをおこしたりすることがあります。泣き方や、騒ぎ方が激しく、大人が「やめなさい」と声をかけても、なかなかおさまりません。

 なぜ、突然パニックを起こしたのか、その原因がわからないことが多いので、自閉症の子どもは「かんしゃくもち」、「怒りっぽい」、「キレやすい」などと思われがちです。

 しかし、パニックになる原因は必ずあります。その理由がまわりにいる人には理解しにくいため、理由のない突然のパニックと見られてしまいます。

 パニックの原因の多くは、強い不安や緊張、興奮などです。ふつうの人でも不安や緊張が高まるとパニックになることがありますが、自閉症の子どもには感覚過敏や、変化への適応ができないため、それほど不安がる必要のない出来事や状況でも、強い不安が引き起こされます。

 そして、自閉症の子どもは、その不安や緊張を自分でコントロールする能力も低いため、パニックになりやすいと考えられます。





特殊な能力を発揮する子どももいる

 自閉症の子どものなかには、小学校へ入学する前に膨大な量の数字や漢字、図形などを短時間に覚えてしまうという特殊な能力を発揮する子どももいます。

 たとえば、バスや電車の時刻表を短時間ながめただけで、すべて覚えてしまったり、難しい漢字などをすべて丸暗記していて、ひとつひとつの文字を正確にかける子どもや、目の前を通り過ぎた車のナンバープレートの数字なども、一瞬のうちに覚えることができる子どももいます。

 カレンダーが、ある規則性をもっていることをすぐに見抜いて「10年後の何月何日は何曜日」という問いに、すぐに答えることができる子どももいます。複雑な図形を覚えるもの得意で、難解なジグゾーパズルを、あっという間に仕上げてしまうこともあります。

 また、絵画や音楽の才能に秀でることもあります。絵の勉強をしたこともないのに、写真を見て鉛筆で精密に書いてしまったり、音楽でも一度聞いただけの曲を覚えてしまったりすることができる子どももいます。こうした能力は「サヴァン症候群」といわれます。