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うつ病の対応

 
 
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子どものうつ病
 大人と異なる点が多く、うつ病とわかりにくい
以前は、子どもにうつ病なないと考えられていました。「心が沈む」、「心が落ち込む」といった、複雑な心の状態は、幼い子どもになないとされていたのです。しかし、その後、子どもには心の状態をうまく言葉にできないだけで、実際にはうつ病があるとの考えがでてきました。

きっかけがあることが多い
子どものうつ病では、受験や不登校、いじめ、両親の離婚などをきっかけにうつ状態になることが比較的多くみられます。また、うつ病と明確に診断ができなくても、抑うつ状態がある子どもは、かなり増えています。社会がますます複雑になっている昨今、こどものうつ病は増加しているといわれています。

体の症状が表に現われる
特に、児童期のころの子どもは「気分が落ち込む」、「何をしても楽しくない」などの気持ちの変化があっても、自分の心の状態を言葉で表現したり、うまく説明することができません。それよりも、「不眠、日中の強い眠気などの睡眠の異常、食欲低下、成長期なのに体重が増えない、やせる」などの身体症状がうつ病の症状としてよく見られます。また、腹痛や頭痛などを訴えることもあります。このような身体症状が表に出るため、うつ病が見逃されているケースがしばしばあるのではないかと考えられます。

発達障害が背後にあることも
子どものうつ病の背景には、「発達障害」があるケースがよく見られます。「高機能自閉症やアスペルガー症候群」(知的障害がないものの、社会的な適応に問題を抱える発達障害の一種)などがある子どもは、うつ病になりやすい傾向があることがわかっています。これらの発達障害がある子どもは、小学3〜4年生ころになると、学校という社会に適応できなくなる場合がありますが、友達関係や学習がうまくこなせないため、ストレスが強くなったり、イライラ感が募ってきたりします。このような要因によってうつ病を発症する場合があります。

中学生くらいでは不登校や問題行動も見られる
小学生高学年から中学生くらいの思春期に入りかけた世代では、児童期とは少し異なる特徴が見られます。抑うつ症状では無気力になるため、学校に行けなくなります。このことは、一般にみられる不登校の子どもと同じですが、家での過ごし方がは多少異なります。不登校の子どもたちは、家の中ではテレビゲームをしたり本を読んだり、自分の好きなことをして過ごします。また、同じことばかりしていると「飽きた」、「つまらない」という感情を持つことになります。

 これに対して。うつ病のある子どもの場合には、意欲が乏しいため、テレビやゲームなどにも関心がなく、家でも何もせずぼんやり過ごします。ところがその一方で、うつ病のある子どもが家庭内での暴力や学校の窓ガラスを割るなどの問題行動を起こすことがあります。一見エネルギーがあるように見えるため、うつ病とはわかりにくいのですが、その根底には強い抑うつ気分と自暴自棄の気持ちが現われています。

子どもの自殺
15〜19才の死亡原因として「不慮の事故」についで第2位をしめているのが自殺です。自殺というと、大人のうつ病の問題と見られがちですが、実際には若い世代の死亡原因の上位をしめているだけに自殺の予防は非常に重要です。
 若い世代は、気持ちの落ち込みが短絡的に死に結びつく傾向にあります。自殺の兆候はそれほどなかったのに、ある日突実行することがあります。また、自殺の方法が大人より単純で、身近な場所で実行するというのも大きな特徴です。そのため、うつ病のある子どもの家族や、周囲の人たちは、自殺防止に十分な注意を払う必要があります。

ほかの病気との鑑別を慎重に進める。
子どもに気になる言動が見られたら、できるだけ早く受診させます。児童期の子どもなら、まず小児科で相談するといいでしょう。小児科の医師は、身体症状が精神的な問題によるものがどうかを見極めてくれます。身体症状がある場合、児童期はまず小児科で診察を行うことが望ましいでしょう。思春期以降の場合でも、身体症状があれば、まずは内科で病気の有無をチェックしておきましょう。

統合失調症の場合も少なくない
精神科の診断では、妄想や幻覚などが現われる精神疾患の1つ「統合失調症」との鑑別も重要になります。統合失調症は、思春期での発症が多い病気です。しかも、初期には抑うつ症状が現われるタイプも多く、うつ病と鑑別しにくいのです。抑うつ症状だけの時期には、統合失調症の鑑定診断はかなり難しいので、その後の経過をよく見守る必要があります。

治療は休養と薬
うつ病と診断されたら、次のような治療を行っていきます。うつ病のある子どもは、心身ともに疲れてきっています。まずは、体を十分に休ませることが大事です。学校や塾、習い事を休ませたりして心身への負担を少しでも減らしていきます。
 しっかりと休ませ、環境の調整をし、親や周囲の大人が病気について理解して適切に対応しても症状が改善しない。もしくは悪化する場合には薬物療法が行われます。思春期でも、場合によっては抗うつ薬を使います。思春期以降のうつ病の治療は原則的に成人の治療に準じます。抗うつ薬は、まずは少量からは始めますが、最終的には成人と同じ量まで増量することもあります。子どもは薬の代謝がいいので、使う量が少ないと、すぐに薬が分解されて十分な効果が得られないためです。薬によって抑うつ症状が改善しても、さらに半年ほどは薬物治療を続けるのが一般的です。親や周囲の大人は、薬の必要性をよく理解して子どもを支えてください。一度治っても、うつ病は再発する可能性があります。したがって治療後も、カウンセリングなどで心の平衡の維持を図っていく必要があります。

家族は焦らず、せかさず、ゆっくり見守る
子どもがうつ病を克服していくためには、家族の協力が不可欠です。家族、特に両親は次のようなことに気をつけながら温かく見守る必要があります。

休養が一番の薬
まずは、ともかく子どもの心と体を十分に休ませることが大切です。勉強のことなどが気になるかとは思いますが。無理に学校にいかせようとしたり、何かをさせようとするのは絶対にやめましょう。また、自殺や自傷行為を防ぐために、うつ病のある子どもの手のとどくとことろに。刃物や薬物を置かないようにしましょう。

回復期は急がせない
気力が戻り始めても、登校や勉強などの活動の再開を急がせてはいけません。うつ病の経過は3ヶ月単位で考えましょう。「昨日とくらべてどうか」などと焦らず「簡単なことから始められればそれでよい」とゆっくり構え、少しずつ回復していく子どもを見守ってください。

成長のステップと考える
うつ病によって、学校を休んだりすると、どうしてもそのことをマイナスに考えてしまうかもしれません。しかし、病気との闘いは子どもの成長の機会と考えることもできます。親や周囲の大人はそれを「待つ」という気持ちで対応することが大切です。

学校との連絡をなくさずに
学校を休んでいるあいだ、学校生活の動向がまったくわからない状態にならないように、少なくとも親は学校と連絡を取っておきましょう。子どもには、焦らせないように配慮しつつ、必要な情報を伝えてください。 


働き盛りのうつ病
産業医や職場の相談制度を利用する。
勤務先に産業医がいる場合には、産業医に症状や仕事で困っていることなどを伝えることが勧められます。従業員のメンタルヘルスを受け持つ部署がある場合には、そこを利用するといいでしょう。企業の中には従業員が利用しやすいよう、相談部署を外部に委託しているところもあります。こうした制度を積極的に利用することが望まれます。
 また、本人がなかなか受診しない場合には、家族が相談してもいいでしょう。相談先としては、精神科のほか、地域の保健所、保険センターなども利用できます。地域によっては、メンタルヘルスの専用相談口や精神科医による相談日を設けているところもあります。


治療は急がば回れの気持ちで休む
 休職制度や有休休暇を使って、休む体制を整えます。うつ病の人は、休むことに抵抗を感じたり、仕事は休んでも「周囲に迷惑をかけて申し訳ない」と思い悩んで、結局心が休まらない人もいます。しかし、うつ病は、何もしないことが一番の治療です。「急がば回れ」を肝に銘じて、しっかり休養をとるようにします。
 そして、抗うつ薬を使って抑うつ症状を取り除きます。薬は、症状がなくなってからも、再び悪化するのを防ぐために、多くの場合1年ほど使います。回復期には復職を焦りがちですが、十分に回復しないまま復職すると、うつ病が再燃するおそれがあります。回復期には、復職を視野に入れつつ、しっかり治療に取り組むことが大切です。


家族の助けはできるだけゆったり。長い目で見守る
 家族と同居している場合には、家族の対応が患者さんの症状にかなり影響します。治療中は、患者さんの負担になることはなるべく避け、休める環境を整えます。よかれと思っても、レジャーに誘うなど本人を「頑張らせる」ことは禁物です。
 症状が強いときには、患者さんは意欲が低下して何をする気も起こりません。しかし、気力が回復してくると、好きなことや趣味など、患者さんにとって行いやすいことから少しずづでも出来るようになってきます。その様子を見ていると「それができるならこれもできるはず」とちょっとした用事を頼みたくなりますが、そこはさじ加減の難しいところです。回復し始めのころには、日によって体調にかなり差があります。昨日は出来ても今日はできない。ということもしばしばあります。やりたくてもできないときがあるということを理解しておきましょう。


職場の人は意識しすぎない
 うつ病で休んでいた人が復職した場合、迎え入れる職場の人も「頑張らせすぎない」などに注意することは必要です。しかし、腫れ物にさわるようにし過ぎず、以前と同じように接したほうがよい面もあります。しかし、たとえ本人のためを思っても「大丈夫?」とか「手伝おうか?」などの声かけは、基本的には避けましょう。
 言われた本人は、もちろん心遣いをうれしく感じるものですが「周囲からはまだ本調子に見えないのか」と引け目を感じてしまう可能性もあるためです。


仕事の管理は細やかに
職場復帰は責任の軽い、簡単な業務から始めるのが理想的ですが、現実には難しい場合が多々あります。しかし、通常業務から復帰する場合にも、いきなり責任の重い仕事を任せたりするのは避けたいものです。本人は休んでいた分を取り戻そうと頑張りすぎることもありますが、無理をすると再発を招くおそれもあります。本人に割り振る仕事の量は慎重に決めてください。また、職場の人が本人の体調まで管理することはできません。体調が悪かったら早めに医師に相談するよう促し、無理をしすぎないように伝えましょう。



復職支援プログラム
これはいきなり職場復帰をするのではなく、移行期間を置くことで、無理なく職場復帰ができるようにすることを目的としています。ほとんどの復職支援プログラムでは、職場と連絡を取りながら職場復帰を進めます。復帰がスムーズに進むことで、職場にもメリットがあります。プログラムは、医療機関が作業療法の一環として行っている場合と、デイケアとして行っている場合があります。プログラムは基本的には仕事を続ける体力を取り戻すことを目指して行われます。

生活のリズムを整える
 毎日職場に通って仕事をするためには、規則正しい生活にもどさなければなりません。家にいるだけでは、うつ病の影響で乱れた生活のリズムはなかなか回復しませんが、プログラムに通うようになると、自然と早寝早起きのリズムができてきます。

作業能力を高める
うつ病を発症すると、しばしば作業能力が低下します。うつ病の症状が消え、職場に復帰しても大丈夫だと思える人でも、実際に仕事をやってみると、作業能力が以前ほどには戻っていないことが多いのです。ところが、本人はそれに気づいていません。また、復帰をあせる気持ちが「できるはずだ」という誤った判断をしてしまいます。プログラムでは、作業能力や集中力を取り戻すリハビリを行います。

対人関係をつくる練習をする
休職中には、家族以外の人と接する機会が少なくなります。しかし、職場では上司や同僚など、たくさんの人とコミュニケーションをとる必要があります。そこで、プログラムは人との交流を必要としない作業から、積極的な交流を必要とする作業へと、段階を踏んで組まれています。

仲間のサポートが得られる
うつ病で休職している患者さんは孤独な状況におかれています。しかし、プログラムに参加すると、同じようにうつ病を発症し、職場復帰を目指す人たちと一緒になるため、気持ちの通じ合う仲間ができます。仲間同士でサポートし合うことが、職場復帰を成功させる大きな力になります。

復職支援プログラムの内容
プログラムによって異なりますが、参加するには、うつ病がある程回復していて、規則正しく通えることが必要です。プログラムには簡単な作業、軽い運動やグループでの話し合いなどが組み込まれています。患者さんの状態によっても異なりますが、最初は負担のないことからはじめ、段階的に参加する内容を増やすことが多いようです。作業では、パソコンを使った簡単な入力作業など、職場での作業に近いことを行い、仕事の感覚を取り戻します。軽い運動では、体を動かすことに加え、リラックスした状態における人との交流も目的としています。
 グループの話し合いでは、複数の人と協調して話しをしたり、かしこまった場での対人関係を築く練習を重ねていきます。また認知療法を取り入れているプログラムもあります。なお、プログラムを受ける期間は、患者さんの回復のペースによってまちまちです。プログラムによっては、期間を3〜6ヶ月に区切っているものもあります。

近くでプログラムを受けられない人は
復職支援プログラムを行っている機関はまだ多くはありません。プログラムを利用できない人が職場復帰の準備を進める場合には、次のようにするといいでしょう。生活のリズムを整えるため、就寝時刻と起床時刻を毎日一定にすることが必要です。日課表を作り、生活をチェックします。体力をつけるために、午前中にウォーキングやジョギングを行います。うつ病の患者さんは朝が苦手になるものですが、午前中に行う日課を作ることで、早く起きる意欲が高まりますし、日中の覚醒度が上がり、夜よく眠れるようになります。午後は図書館に行き、2〜3時間本を読んだりして過ごします。家から出て適度な緊張感を保つ練習にもなります。以上のことが毎日できるようになったら、職場の上司に連絡をとり、あいさつをしたり、仕事の資料をもらってまとめるなど、手慣らしをするのも勧められます。

復職前には
職場復帰が可能な状態になったら、産業医や上司に連絡をとり、復職に向けた具体的な相談に入ります。職場復帰する直前は、本当にやっていけるだろうかと不安が高まります。自分の作業能力に不安を感じたり、周囲の人たちにどう見られているのかが気になったりしますが、ここを乗り切ることが大切です。
 産業医や上司には、現在どのような状態にあるのかを、伝えておくようにします。無理をして、すっかりよくなったという必要はありません。それよりも、現在の状況を正しく伝えておくことが大切です。職場に復帰する前に、何度か上司にあっておくことも勧められます。上司も安心しますし、復職後のストレスが軽くなります。