自閉症の原因


自閉症は「心の病気」ではなく「脳の障害」

 自閉症は、かつては「心の病気」と考えられていましたが、現在では、脳の一部になんらかの機能障害があるのが原因とされています。最近では脳の研究が進み、感情のコントロールにかかわる前頭葉を中心に、脳全体のシステムになんらかの障害があると考えられています。母親の胎内にいるときに障害が起きる、染色体の異常によるなどさまざまな説がありますが、いずれもまだ研究段階です。

 自閉症は多くの場合、その障害に気づくのは3〜5歳ごろです。子どもが外の世界から刺激を受けながら、運動機能を発達させていく幼児期にならなければ発達の遅れや障害がはっきりとわからないからです。また、1歳以前で気づかれることもありますが、その場合は専門家の診断によることがほとんどです。

 かつて、自閉症は「心の病気」と考えられていたときには、カウンセリングがさかんに行われていましたが、現代では、脳の機能障害に対応する治療や、子どもが社会で生活に入っていけるよう、環境をととのえ、行動を教える教育プログラムが取り入れられています。


自閉症スペクトラム

 自閉症スペクトラムとは、一見すると自閉症とは似た別の傷害のようにとらえることもできますが、そうではありません。自閉症のことを指します。自閉症スペクトラムとは自閉症という発達障害を「連続体」としてとらえる概念です。連続体とははっきりとした境界線のない枠組みのことです。

 自閉症はアスペルガー症候群やAD/HD(注意欠陥/多動性障害)など、ほかの発達障害と重なる部分が多く、区別が容易にはできませんので、連続体とかんがえられています。また、自閉症は、周囲の対応ひとつで症状が重くなったり、軽くなったりするために、診断基準にあてはめて考えると無理が生じることがあります。

 「特性があるかないか」「自閉症であるかないか」という両極端な考え方をするのではなく、診断名にとらわれず、日々成長していく子どもの様子を見守って、その都度、柔軟に適切な対応をしていくことが求められます。