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子どもに早く言葉を覚えてほしいと願うのは当然ですが、その願いを強く持ちすぎると、子どもに負担ンをかけてしまいます。言葉の遅れがある子どもに対して、言葉を無理に教えることは、苦痛につながりますので、言葉に限らずコミュニケーション全般を教えます。
自閉症児のなかには、言葉を覚えやすい子と、なかなか覚えられない子がいます。言葉の遅れがある子に発語を強く求めると、その重圧からかえって発達が遅れることがあります。ほかの子と比べないで、本人の特徴にあわせた療育をしていくことが大切です。
言葉以外のコミュニケーション方法として、もっともよく使われるのが、イラストです。視覚に訴えかけると、子どもは比較的に反応しやすくなります。なかには、動作で表現したり、大きな音で要望を伝えようとする子もいます。もっとも大切なのは、子どもの気持ちを理解することです、そのためには、言葉以外が役にたつ場合はどんどん活用していくようにします
(言葉以外のコミュニケーション)
絵や写真の活用・・・人の写真に名前を書いて覚えさせたり、ものをイラストで教えたりする。
記号・・・「A、B、C」、「○、△、×」などの記号を使って、ものの区別をつけさせる。
言葉・・・単語を覚えられる子どもは多いので、イラストや写真を使って学ぶと早く身につけられる。
動作・・・子ども動作から、要求の有無をみわける。カードを使わせるのも良い
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自閉症児はひとり遊びを好みます。本人が楽しんでいるのを止める必要はありませんが、それだけでは社交性を養うチャンスをのがしてしまいます。ほかの遊びも教えましょう。絵を描くことや、音楽、スポーツなどをして、他の人と交流を持つことが成長や適応の助けになります。
競い合う遊びは控える
集団の中に入って遊ぶ体験は教育の一環になります。基本的には子どもにとってはよいことですが、他の子どもと競いあうことはあまり好ましくありません。子ども同士をくらべることは、勝つことにこだわりすぎて、楽しく遊べないことがあります。
時間と場所を決めて遊ばせる
遊びは、課題をこなした後のごほうびとして行います。課題を行う部屋とは別の場所で、時間を決めて遊ばせるとよいでしょう。スタートとゴールがわかれば、子どもは安心して遊べます。
遊びに幅を広げる
自閉症児は独特の感性で遊ぶため、周囲の子どもと興味の対象が合わないことがあります。そのままでは友達との交流が少なくなってしまいます。人と交流できる遊びも教えていきましょう。
自由時間のパニックを防ぐ
自閉症児は、決められた課題を好みます。判断をしたり新しいことをするのは苦手です。課題の後で、自由時間を与えられると何をすべきかわからず混乱を起こすことがあります。
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子どもは人のまねをして行動を覚えていくものですが、自閉症児は人まねをするのが苦手です。例えば、自閉症の子どもが歯磨きやトイレ、入浴などを上手にできないのは、「歯磨きをする」という抽象的な表現を理解できないからです。歯ブラシを何度、どのように動かせばいいのか、目で見てわかるように教えると理解できます。ただ歯磨きをして見せたり、話して説明するだけではうまく伝わりません。どのような順番で、どれだけの回数をくり返せばいいのか具体的に提示するようにします。
トイレや入浴も同じです。作業のひとつひとつを、イラストや写真で説明すると、ずっと理解しやすくなります。視覚的構造化のアイデアを工夫できるようになると、子どもの自立的活動が発展して親子の共生が楽しくなってきます。
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TEACCHの実践方法としてよく知られているのが、「構造化」です。「構造化」とは、部屋や空間にそれぞれの意味を持たせて、子どもが行動しやすい環境を作ることです。
自閉症児は、多目的で自由な空間での行動が苦手です。なにをすべきか判断できず、かえって混乱を起こします。各部屋に特定の意味をもたせることで、そうした混乱を避けることができます。
自宅をひとつの大きな空間として考え、子ども部屋は勉強エリア、居間は遊びエリアなど、各部屋に役割を持たせます。部屋の意味がはっきりすると子どもは安心します。
例えば、子ども部屋は勉強スペース専用にします。集中して学習できるよう必要最低限の勉強道具だけを置きます。居間は生活全般と遊びのスペースとします。勉強道具は置かないようにして、遊びと勉強を分けて考えるようにします。台所は手伝いのためのスペース。食器運びや料理、ごみ捨てなどをする場所として覚えさせます。
また、廊下や居間の入り口にボードを作り、スケジュールカードを貼り付けます。子どもは作業がひとつ終わるたびにここにもどり、次の作業を確認するようにします。
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発達障害児の多くが、話し言葉よりも絵や文字で説明したほうがよく理解できます。TEACCでも、イラストを活用した指導法が重視されます。絵や図、記号を活用して、子どもが理解や反応をしやすいやり方で伝えましょう。
絵や図を使った療育を続けていくと、子どもはカードが特定のものを示すことを覚えて、それを自分から使うようになります。カードを使って食べたいものを示したり、トイレに行きたい気持ちを伝えたりすることを覚えます。そうしてコミュニケーションがはじまります。
言葉の遅れがある子どもでも、言葉を覚えないだけで、理解力がないわけではありません。言葉で何度言い聞かせても覚えられないことが、イラストや写真をみせながら説明すると、とたんに理解ができる場合があります。ビジュアルを活用することが、生活のサポートにつながります。イラストや写真をきっかけに、ものの名前を覚えることもあります。
ただし、すべての自閉症児が視覚を使った理解を得意としているわけではありません。子どもによって、理解しやすい方法はさまざまです。まれには絵よりも音を好む子どももいます。視覚化することが絶対の方法とは考えず、子どもの理解度をみながら、必要に応じてとりいれるようにしていくとよいでしょう。
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自閉症児は、頭の中でスケジュールを組み立て、何をなすべきか判断することが、うまくできません。自閉症児の特徴のひとつに、時間の概念がわかりにくいことがあります。ものごとを時間で区切って考えることが苦手で、1時間や30分といった単位も、感覚として理解することが困難です。そのため、何をするにも先がみえず不安を感じてしまいます。
この問題を解決するためには、時間割が役立ちます。空間を「構造化」すると理解しやすくなるのと同じで、時間割をつくると、時間の長さや、行動スケジュールを表にしてみせると理解しやすくなり、子どもは暮しやすくなります。スケジュールを理解できるようになってきたら、時間の単位をふくめた表に変えて、時間の感覚も覚えていきます。
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自閉症児は、慣れている場所や体験したことのある作業を好み、未知のものごとを恐れます。ですが、そのままでは、できることがかぎられ学習が発展しません。本人の興味や能力を見出して学ぶ力をつけていきます。
子どもの学習能力には個人差がありあますが、好きな科目に重点をおいて育てていくことが、ひとつの原則になります。言葉の遅れがある子どもには、学びやすい環境をつくってあげることが必要です。イラストや音楽など、本人が興味をもつことがらをきっかけにして、言葉を学んだり活動を覚えたりします。
勉強の面でも、同じ自閉症児でもおおきな個人差があります。知的発達の程度によって違いが生まれてきます。言葉が理解できる子どもは、通常学級での授業に対応できることが多く、なかには大学を卒業する人もいます。一方、言葉を覚えにくい子どもの場合は、高度な勉強をこなすことは難しく、特別な教育をうけることが必要になります。
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障害があっても、子どもを通常学級に行かせたいと思うのは、親としてふつうの考え方なのかもしれません。学校には毎日不安や苦痛のないように、できるだけ楽しく通うことがとくに大切です。
しかし、周囲とのコミュニケーションや学習に適応できない場合、通常学級に通うのは、混乱のもとになりがちです。そういった場にいると、子どもはより適応しづらく感じてしまいます。
特別学級に通い、障害を理解した先生と接したほうが、情緒的に安定して、学べることが多くなります。無理に通常学級をめざさず、子どもの特性にあった通学先を選ぶようにします。
(特別支援学校)
障害者が幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準じた教育を受けることと、学習上または生活上の困難を克服し自立が図られることを目的とした学校。盲学校(もうがっこう)、聾学校(ろうがっこう)、養護学校(ようごがっこう)がある。自閉症児は養護学校に入る。
(通常学級には行けないの?)
通常学級に通うことには、専門教育を受けられないというデメリットがあります。家庭で療育を続けながら、学校では一般的な教育を受けることになりますが、毎日不安や混乱なく学べなければ、教育効果はあがりません。
ただし、平成19年度からは。通常学級に通いながら、専門教育を受けられる「特別支援学級」が、さまざまな発達障害にも対応しはじめました。この制度が今後より充実すれば、通常学級に通うことも期待できるかもしれません。
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