自閉症の治療(療育)


 自閉症の治療(療育)  TEACCH(ティーチ)プログラム
 薬物は基本的に用いない  療育は通院で対応
 入院が必要な場合は


自閉症の治療(療育)

 現在、自閉症への治療の中心になっているのは「療育」という治療教育法です。自閉症の主な特性は、脳の障害によって社会的な行動が身につかず、生活に支障をきたすというものです。その困難を減らすためには、脳機能を正常化させて、根本的な改善をするのが理想なのですが、現時点ではそういった方法は確立されていません。

 対応は子どもに社会的な行動を教えて生活上の問題を減らす「治療教育」が中心になります。治療教育は、生活するための手助けです。なにもかも家族が助けるのではなく、子どもが自閉症を抱えながらも不便なく暮していけるようサポートします。


治療教育(療育)の中心は「TEACCH(ティーチ)プログラム」

 自閉症の治療の中心になるのは、「TEACCH」という治療教育法です。現在、世界的にもっともさかんに取り入れられているもので、1960年代にアメリカのノースカロライナ州で生まれた治療教育法です。

 実績が世界中で認められていて、日本でも自閉症教育の中心になっています。自閉症児は、ものごとを認識する方法が他の人と異なり、社会に入っていけないことがあります。TEACCHは、理解のギャップを埋めて、子どもの理解を助けるための教育をします。

 家族と医師が協力して、子どもに必要なサポートを模索して、様子を見ながら実践します。子どもを一般的な枠組みに当てはめず、たった一人の子として、性格や特徴を尊重して育てます。TEACCHは療育の手段として、さまざまな実践方法が確立され、たくさんの子どもに役立っています。

(TEACCHの4つの観点
子どもを個人としてみる
TEACCHは一般に認められている方法ですが、人によっては具体的な方法に違いがあります。また、自閉症児を持つ両親の暮らしは人それぞれ異なります。ひとりひとりにあった方法を選び、調整していくことが大切です。

両親と専門家が協力する
両者の協力関係なしには、療育は成り立ちません。親が子どもの様子を見守ってトラブルを報告し、専門家がそれに対応を指示します。また、第3者が関係することで、親が孤立して悩むことも避けられます。

子どもの人生全体を見る
目の前の問題にとらわれず、将来を考えることが大切です。親が全面的な支援をしなくても自立して生きていけるよう、先をみすえた指導をします。

子どもを受け入れ歩みよる
子どもの力を否定せず、どのような特徴があるのか理解してください。その特徴を受け入れて、療育者である大人が子どもにあわせ歩みよります。


薬物は基本的に用いない

 自閉症の治療には原則として薬物は用いません。現在までに、自閉症の原因治療薬として開発され、広く認められているものはありません。それは自閉症の原因である脳の機能障害について、詳しいことがわかっていないためです。

 脳のどこにどのような作用をする薬があれば、特性を軽くすることができるのか、いまも研究が続いています。子どもに対する薬物療法は、その後の成長に影響を与える可能性があるため、慎重に行われます。薬が開発され、対応として確立されるまで、まだ時間がかかりそうです。

 但し、発達障害の一種であるAD/HD(注意欠陥/多動性障害)には薬を服用することもあります。気分障害や不安障害などがあって、治療教育することが難しい場合に、特性を抑えるために薬が使われることがあります。


療育は通院で対応

 自閉症への療育は、自宅や保育園、保育園、日常生活の中での療養が中心です。療育の目的が社会への適応ですので、できるだけ家族とともに一般的な社会生活っをおくることが望ましいとされています。そのため、医療機関は通院で利用します。通院では医師の指示を仰いだり、療養経過を確認するときに訪れます。毎日通ったり、入院をすることは原則としてありません。


入院が必要な場合は

 家庭で対応しきれない危険な行動や、命にかかわる行動が現れているときは、一時的に入院を考えることもあります。感情のコントロールがきかず、自身を傷つけたり、ほかの子に乱暴をしてしまう場合で、適切な対応ができないときには、入院して専門的な治療をうけるようになります。また、食事へのこだわりが強すぎて偏食したり、トイレや入浴を覚えられず、生活がなりたたない場合にも、それらの施設に入って生活習慣の習得をすることが選択肢のひとつになります。

 入院は当面の危険を回避するために行われます。入院をきっかけとして、生活習慣を変え、危険な行動をなくすことが目的で、できるだけ早く退院します。長期入院してしまうと。社会生活にもどることが困難になるので、退院後の生活を考慮して入院はできるかぎり短期間にします。