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パーソナリティ障害(人格障害)

パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか (PHP新書)
パーソナリティ障害(人格障害)の症状

パーソナリティ障害の治療

 パーソナリティ障害の治療は精神療法が行われます。精神療法とは、カウンセリングを通じて少しずつ病理的な応答のパターンをほぐしていくことです。薬は補助的に使います。精神療法は1回50分ほどかけるのが一般的です。あせらず気長に治療に取り組む覚悟が必要です。

 治療には個人差がありますが、問題行動が収まるまでに半年〜1年、治療が終わるまでには2〜3年程度かかります。治療には時間がかかりますので、家族の方も落ち着いて、冷静に取り組まなければなりません。
 治療法はパーソナリティ障害のタイプにより異なりますが、すべての治療に共通する原則がいくつかあります。パーソナリティ障害の人は自分の行動に問題があるとは思っていないため、社会に適応していない思考や行動が引き起こす、有害な結果に本人を直面させる必要があります。それにはまず、本人の思考や行動パターンから生じる望ましくない結果を、心理療法士が繰り返し指摘していきます。
 
 うつ病、恐怖症、またはパニック障害があるパーソナリティ障害には、薬物療法が適切な治療法となる場合があります。ただし、薬には症状を緩和させるだけの限られた効果しかありません。一方、パーソナリティ障害から起こる不安や悲しみなどの感情は、薬で十分に軽減されることはまずありません。境界性パーソナリティ障害の人に薬物療法を行うと、薬の使用方法を誤ったり、自殺を図るといった問題が生じやすいため注意が必要です。


 パーソナリティ障害の治療は、ほかの心の病気と同様に保険の利く「保険診療」になります。ただし、実際には「うつ病」、「摂食障害」などの別の病気として治療を始めることが多いようです。治療で問題なのは治療に時間がかかるということです。保険診療で治療を進めると、時間的にも金銭的にも病院に大きな負担がかかることになりますので、そこでは診てもらえないということも実際に起こってきます。

 その結果、全額を患者さんが負担する「自由診療」となるサイコセラピストやクリニックを紹介されることもあります。自由診療を受診する場合の料金は医療機関によって異なります。精神療法は最低でも週1回が原則になっています。お金がかかる治療ですので、よく考えてスタートするようにします。

 また、症状によっては入院が必要なケースもあります。自殺行為や暴力などの行動が家族の手に負えなくなった場合です。このときは精神保健指定医の同意があれば本人の意思に関係なく入院させることができます。

 もうひとつは患者の同意のもとに行われる「任意入院」です。病院に入って休息がとれるのは大きな変化ですし、家族から離れて別の環境で集団生活を送ることはプラスになります。

 いずれにしても、パーソナリティ障害の治療における入院は一時的なものです。症状が落ち着いたら、外来診療に切り替えるのが一般的です。


家族の対応、家族療法

 パーソナリティ障害は、自覚がある場合であっても、問題意識を持たないことが多く、ふつうは本人からの積極的な受診は望めません。したがって、多くの場合は、家族や職場の人が精神科や専門施設に相談をして、本人の周囲の状況を相談し、対応のためのアドヴァイスを受けることになります。

また、親が潜在的なパーソナリティ障害である場合、その子どもが心の病気にかかり、それが、きっかけで、はじめて親のパーソナリティ障害が判明し、親子一緒に治療に結びつくこともあります。
パーソナリティ障害をもつ家族や周囲の人は、その行動や言動に振り回されます。同じ価値観で話をしても無駄なことが多く、逆に問題を複雑にすることにもなりかねません。日常生活の面では、言動にふりまわされることの無いように、毅然とした態度で、かつ、愛情を持って接することが望まれます。

パーソナリティ障害の原因は家族にあることが殆どです。せっかく治療をしても不安のある家庭に暮らしているか限りなかなか改善は望めません。そこで家族の方も治療に参加して、治療に取り組みます。このように家族もカウンセリングを受けることを「家族療法」と呼びます。特に患者さんが未成年の場合はこの方法が用いられます。

一度、信頼関係を失った家族が、理想的な関係を築き直すのは容易ではありません。「家族療法」をうまく進めるためのポイントは「自分たちの問題から目をそらさない」、「親と子の領分をはっきりさせる」「親は一環した態度を示す」、「親は子どもと対等に接する」、「兄弟姉妹を比較しない」など、家族同士のバランス感覚を養うことが大切です。


相談はどこで

パーソナリティ障害を受診する際は「精神科」、「精神神経科」、「メンタルクリニック」、「神経科」を訪ねます。パーソナリティ障害の診断は非常に複雑です。精神障害や神経症との区別も専門医でないとつきません。相談する際は「うちの子はパーソナリティ障害ではないか?」と聞くのでなく、症状や行動を具体的に伝えるようにします。

初めから、いきなり「精神科」には行きづらいという方もいるでしょう。その場合は地域の保健所や精神保健福祉センターに相談することをお勧めします。保健所には保健師やカウンセラー、精神科の医師などによる心の健康相談なども行われています。思春期、青年期相談、社会的ひきこもり、DV、アルコール依存など、広く相談にのってくれます。まずは家族だけが行ってアドヴァイスをもらうのがいいでしょう。また相談員が往診してくれる場合もあります。その他には「精神保健福祉センター」、「児童相談所」、「女性相談所」などもあります。