人間の心と身体は分かちがたいものです。「病は気から」といわれるとおり、精神的な葛藤がからだの病気を引き起こすことは少なくありません、また、それとは逆に、うつ病もまた、からだの病気をきっかけとして発症するケースがみられます。
うつ病を招きやすい病気には「がん」、「糖尿病」、「心筋梗塞」、「脳血管障害」などがあげられます。
たとえば、がんの場合、およそ2割の人がうつ病に陥っているといわれています。がんの末期では、その割合が5割程度までなると指摘されています。どんな病気でも、経過が思わしくなければ不安が増して、気分はふさぎがちになります。とくにがんの場合は、移転や再発をおこしたり、ときに耐え難い痛みをともなうため、うつ状態におちいることは当然かもしれません。不安感、興味の喪失、自殺したいという気持ちなどはがんに直面した精神的な落ち込みと捉えがちですが、うつ病を発症しているケースも多くあります。
また糖尿病の人がうつ病を発症する割合も高く、約2割になるという報告があります。糖尿病の場合、完全には治らない病気になったことによる精神的ストレスのほかに、インスリンの分泌にも異常があるのではと考えられています。糖尿病の人がうつ病になると、気力や意欲も低下して、充分な血糖コントロールができず、合併症が起こりやすいとされています。
心筋梗塞の人がうつ病を発症した場合は、心筋梗塞の治療に支障をきたすこともあります。いつ発作を起こすか分からないという不安を抱え、気力も減退して、医師の指示を守りながら日常生活をおくることが難しくなります。そのため、うつ病を合併した人は、うつ病でない人より死亡率が高くなるといわれています。
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