HOME  
 チックをする子にはわけがある―トゥレット症候群の正しい理解と対応のために (子育てと健康シリーズ)
チック症(トゥレット症候群)の治し方
 
 
チック症になる原因は
 
 チック症の基本的な原因は、生まれつきチックをおこしやすい脳の体質であろうと考えられています。チックのなかでも体と声のチックを持つトゥレット症候群では、その家族や兄弟でもチックがみられやすく、チックの出やすい体質が遺伝する傾向があるといわれています。

 チックはドーパミンという神経伝達物質を抑える作用の強い薬がチックに有効であることから、ドーパミンを中心とする神経伝達物質のアンバランスが関係すると考えられています。つまり、チックは親の育て方や、本人の性格に原因があっておきているわけではありません。

 チックになりやすい素質をもつ人が、発達の過程で神経伝達物質のアンバランスが生じやすい年齢にさしかかり、運動の調節に関わる神経の活動に不具合をきたして、チックが発症してくると考えられています。しかし、どういうメカニズムが加わり慢性化してしまうのか、どういうサインがあると慢性化しそうかということは今のところわかっていません。

 家庭や幼稚園、保育園や学校などにおけるストレスはチックの根本的な原因ではありませんが、誘引として作用することがあります。どれくらいチックになりやすいか、どれくらいストレスを感じやすいかは、ひとりひとりの子どもで異なっています。同じ心理的ストレスによっても、どのようなこころの状態になるか、そしてチック症が誘発されたり、悪化するかは一律ではありません。

 幼児期の終わりから学童期のはじめころにチックは発症しますが、そもそも発症しやすい時期であること、卒園や就学をめぐって緊張したり、興奮することなどが関連しているようにも考えられます。
 


チック症には一過性と慢性がある
 
  チック症は、チックがほとんど毎日のように起こる期間が1年以上か、それ以下かによって一過性と慢性に分けられます。

 慢性チックは、運動性チック障害と音声チック障害、そしてトゥレット症候群の3つに大きく分けられます。

 一過性チック症とは、チックの持続が1年未満のチック症であり、チックの種類は、運動チックだけや音声チックだけ、または両方ある場合もあります。一過性チックは6〜7歳ころにもっともよく見られます。目をパチパチさせたり、キュキューッとつぶったりするのが数ヶ月目立っていたのが、いつの間にか消えていたというのが典型的な症状です。

 慢性チックは、慢性運動チックまたは慢性音声チックが1年以上続いた場合に慢性といわれます。大人になっても、日常的にまばたきが目立つ人、体の病気がないのに、しょっちゅう咳払いをくり返す人の中には、慢性チック障害の疑いがあります。

 トゥレット症候群とは、運動チックおよび音声チックの両方が多様にあらわれ、それが1年以上続くチック症のことです。
 


チック症は心の状態で変わる
 
  チックは心因性ではありませんが、周囲の状況やそれに関連するこころの状態によって変化することがしばしばあります。

 緊張が増加していくときや、強い緊張が解けたときに症状が増加し、適度の緊張を保って精神的に安定しているときには症状が減少する傾向にあります。

 幼稚園、保育園や学校ではチックが目立たないのに家庭ではチックが多いことがありますが、これは家庭に問題があるからではなく、むしろ学校などで緊張したあとでリラックスするためです。

 長期の休暇に入ると、始めに一時的にチックが増え、やがて減っていくのですが、休暇の終わり頃に再びチックが増えるとうことも多くあります。

 緊張や不安だけでなく、楽しいことで気持ちが高ぶったときにもチックは増加する傾向にあります。テレビを見たりゲームをしたりしているときにチックがめだつことはよくあります。同じように楽しいことに集中して作業をしているときにはチックは減少する傾向にあります。

 また、こころの状態だけでなく、チックは疲労でしばしば増加して発熱で減少することがあります。一日の中では夕方から夜にかけて増加する傾向にあります。しかし、睡眠中にはほとんどみられません。