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 チックをする子にはわけがある―トゥレット症候群の正しい理解と対応のために (子育てと健康シリーズ)
チック症(トゥレット症候群)の治し方
 
 
チック症の治し方
 
上手につきあっていけるように支えること
 チック症の治療の基本となるのは、家族ガイダンスや心理教育および環境調整です。チック症を正しく理解して不必要な不安をもたずに上手につきあっていけるように導くことを目指しています。

 チック症のかなりの部分が一過性の障害ですから、症状が消失することのほうが多いのですが、チック症が何年も続いて悩んだり不安が強まったり自信や意欲をなくしたりして、成長してチックが軽快、消失したのに、こころの問題が残ってしまうことがないように配慮する必要があります。チックを自分の特性として受け入れて、症状をもちながら前むきに生活していけるように支えていくことが大切です。


本人や家族が受け入れる
 チックとはどういうものか、どうして起こるのか、どう対応したらよいかなど、本人や家族を中心とする関係者が理解して受け入れるようにすることが大切です。年齢が低い場合は本人よりも家族が悩んでいることが多いので、まず、チックがどうして起こるのかを理解します。

 チックは家族の育て方や、本人の精神力が弱かったり、自己コントロールの努力が足りなかったためチックになっているのではありません。チックは、背が高いとか低いとかというような本人の特性の一つとして受け入れていくことが必要です。


本人の不安や緊張を和らげる
 チックは意図的に行っている運動ではないので、やめさせようと叱るのは不適切であり、ときには症状を意識させてむしろ悪化を招くこともあります。かといって、チックにまったくふれないようにして家族が緊張したり、本人の存在を無視することになったりするのも不自然です。チックが激しい時は、心身の疲労がたまっていないか気をつけるとともに「大丈夫?」とさりげなく声をかけるようにします。

 本人に対しては、チック症状を過度に意識しないように配慮しながら、それが異常なことでなく、経過とともに軽快、消失するはずであることを伝えて安心するように導きます。「心配ないよ」といった暗示だけでも有効なことがあります。
 


チック症はどのくらいで治る
 
  チックの大部分はまばたきや頭をふるなど1つか2つのチックで、あまり種類が増えることはありません。このような場合は半年か1年以内にほとんど消えてしまいます。チックの大部分は治ると考えていいでしょう。

 子どものころの一時期にチックのある子どもは多く、10人に1〜2人くらいいるといわれています。その中で1年以上続いて、チックが全身に広がって声もでるような子どもは1万人に5人くらいです。幼稚園から小学校低学年で出てくるチックは、20人中1人以上が、何もしなくても1年以内に消えてしまいます。

 まばたきや頭をふるチックだけでなく、肩や足も動いたり、全身を突っ張るような動きがあったり、声がでたりするチックは少し長引くのですが、それでも半数の子どもは中学の終わりくらいまでに消えてしまいます。残りの半分はその後も少し残るのですが、チックの動きは年齢とともにゆっくりとめだたないようになって、まわりの人も気づかなくなってきます。

 またチックは軽くなってくると、家の中では目についても、学校や外出したときなど、本人が気がつかないうちに軽い緊張がかかるためか、抑制されてあまり目立たなくなります。
 


チックは殆ど治る
 
  多くのチック症は一過性チック障害であり、1年以内には消失します。慢性のチック症でも10歳から10代半ば過ぎぐらいまでがもっとも重症であり、それ以降は軽快の方向に向かうことが多く、完全に消失することもあります。

 トゥレット症候群でも、90%が成人期の始まりまでに軽快、消失するといわれています。しかし、少数ではありますが、成人まで重症なチック症状が続いたり、成人後に再発することがあります。そのような場合には、人生のなかでもっとも激しい症状を成人後に体験することがあります。

 どのような条件があれば一過性チック障害が慢性化するのか、慢性化した中でも成人後まで重症でありつづけるチック症となるかはよくわかっていません。