摂食障害(拒食症と過食症)についてわかりやすく解説しています。

治療はまず体力の回復をする

看護婦さん

治療には大きく分けると身体的治療と心理的治療があります。心に問題があるため起こってくる病気ですから主体となるのは心理的な治療です。

 

心理的療法は体力が戻り、普通の生活にある程度たえられる状態になってからでも遅くはありません。まず本人の命を守ることが最優先になります。

 

心理的な治療は身体的な症状がある程度回復しないと行えません。この病気では常に心とからだの両方をみて治療を行うことが大切です。

 

重い低栄養状態がつづいて体力が消耗している人には、思考能力が鈍っている場合があるので、まず、35キロ程度まで体重を増やすように栄養補給に務めます。


体重が30キロを切ると命の危険

摂食障害は、生命を維持する基本である食べるという行為にかかわる病気だけに、著しいやせなどは身体にもさまざまな問題が生じます。

 

体重の減少がいちじるしい場合、特に注意しなければならないのは低血糖発作です。血糖値が低下するために意識障害やけいれん発作を起こすもので、しばしばみられる症状です。

 

発見が遅れると生命も危険になります。発作を起こしたときにはすぐに病院に運び、摂食障害であることを伝えます。

 

身長によっても違いますが、体重が30キロを切ると低血糖発作を起こしやすくなります。やせが目立ってくるとほとんどの人に貧血が認められます。からだは酸素不足になり、疲れやすい、めまいを起こす、顔色が悪いなどさまざまな症状があらわれてきます。

 

また、やせて極端に栄養状態が悪くなると、脳が萎縮することがあります。脳が萎縮すると思考力および、とくに記憶力の低下が見られます。

入院が必要な場合

一般には体重が35キロ以下になったら入院して治療を行う必要があります。拒食症では食事を受け付けなくなることがありますが、この場合はすぐに入院をする必要があります。

 

過食症の場合は入院を必要とするケースはそれほど多くありませんが、本人の混乱が強く、家庭での対応の限界を超えるような場合は入院の対象となります。

 

入院は本人が拒否する場合は強制的に入院させても効果がありません。体重が30キロ以下になって衰弱がいちじるしい場合を除いて、本人の意思を尊重することが大切です。

 

治療を受ける場合は、あらかじめどんな治療を受けるのか説明を受け、本人が納得しておく必要があります。

家族のサポートが欠かせない

家族も、本人の心理の理解やサポートの仕方を中心に継続的に学んでいきます。拒食症の場合は、やせの異常心理に多分に支配されているため、身体療法を抜きにした精神療法だけでは限界があります。

 

摂食障害は家族と一緒に治療していかなければならない病気なので、治療には家族の力が必要です。ことに母親のサポートは、本人の年齢に関係なく必要です。

 

大原則は患者の信頼を裏切らないようにすることです。本人は、治療によって自己主張をはじめますが、最初はごく幼稚なもので、相手の対応次第で再び殻に閉じこもってしまうことがあります。

家族が一緒に治療をしていくポイント

「励まさない」
励ますことは普段日常でも良く行われることですが、病気が治りかけて立ち直ろうとしている本人を見ると、つい激励したくなります。

 

しかし、激励されることは本人にとって大きな負担となります。落ち込んでいる人は、自分が落ち込んでいることをよく知っています。よくわかっているのに改めて「がんばれ」と言われたら、不満と憎しみだけが生まれます。

 

本人にしてみれば、励まされている自分が、励ましている人の要求にこたえられないということは、自分がダメな人間であるからと思い、さらに落ち込んでしまうのです。

 

 

「あせらない」
もう少しで治るということがわかれば、できるだけ早く治るようにしてあげたいと思うのが人情です。しかし、治療の途中で本人が立ち止まれば家族もいっしょに立ち止まって、動き始めるのを待つくらいのゆとりがなくてはなりません。

 

 

「強制しない」
食にしても、生活態度にしても、何ごとも強制してはいけません。本人は命令されると、発病以前のように素直に従うのではなく。反抗心をあらわにします。これは「もう誰かのいいなりにはならない」という自己主張なのです。これらはみな本人との信頼関係を築く上で不可欠なことです。

効果がある精神安定剤

過食で混乱している場合などではカウンセリングだけでは限界があるので、薬物が必要となることがあります。過食によるうつ状態やイライラには、精神安定剤や抗うつ薬などの薬物が高い効果を期待できます。

 

抗うつ薬としては、SSRI(選択的セトロニン再取り込み阻害剤)と呼ばれる薬物がよく使われます。これにはパロキセチン(商品名:パキシル)やフルボキサン(商品名・ルボックス)などがあります。脳内の神経伝達物質に直接作用してうつ状態を改善します。

 

これらの抗うつ薬は摂食障害の治療に用いられます。また、精神安定剤はイライラの軽減に有効です。精神安定剤には、抗不安薬と抗精神病薬があり、興奮が強い場合は抗精神病薬もよく使われます。

診察は何科で受診する

摂食障害の治療は一般には、心療内科、精神科、小児科などで診察してもらいます。最近では摂食障害に対する一般の知識が普及しているので、ごく早い時期に精神科や心療内科で適切な治療が受けられるようになりました。

 

拒食症の人は、生理がないということから婦人科を受診したり、体重減少のために内科を受診したりしたときに、摂食障害がわかり専門医を紹介されることも多いようです。

 

また、摂食障害と思われるが疑わしい、どこの病院を受診したらいいかわからないといった場合には、保健所など公共機関の相談窓口を利用するのも一つの方法です。無料健康相談などの制度があり、病院を紹介してもらうこともできます。