うつ病

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うつ病(鬱病)とは


 うつ病 とは、様々なストレスにより、慢性的に気分が憂鬱になったり、何事に対してもやる気が出ない状態が長期間続く病気です。多くの場合は、しばらくするとうつ状態を克服し平常心に戻りますが、このストレスが一定以上の強さや期間を超えると、自然の治癒力を超えてしまうため、うつ病 の症状などを発病してしまうことになります。

 同じストレスを受けてもうつ病になりやすい人とそうでない人がいますが、これには性格が大きくかかわっており、その性格は、遺伝的に持っている素質や、生育環境や教育などに影響されて形成されると考えられています。

 うつ病 は現代病ともいわれ、一般成人では約10人に1〜2人くらいは、何らかのうつ病 の症状を経験するといわれているくらい一般的な病気になっています。うつ病 になると理由も無く、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどが延々と続きます。また悪化すると「自分は生きている価値がないんだ」と思い込むようになり、いつ自殺するかわからない状態になります。

 この様な現代病とも言えるうつ病 ですが、その原因は正確には解っていません。しかし、うつ病は心の病、心の症状であると同時に脳の病気でもあるということが解っています。単なる「気の持ちよう」や「心の弱さ」だけで起こるものではなく、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの量が減少し、情報伝達がスムーズに行われていないことが原因だともいわれています。

 うつ病 の症状は、十分な休養と正しい治療により、うつ病患者の約80パーセントは、1年以内にほぼ発病前の状態に戻ることができます。しかし、残りの約20パーセントは、一度はうつ病を克服しても、また再発したり、うつ病 の症状が慢性化しているようです。うつ病が完治するか慢性化するかは、いかに適切な治療を受けることができるかがポイントになります。



うつ病 症状


気分や意欲の低下
考えがまとまらない
物忘れが多くなる
食欲の減退・増加
睡眠の障害
身体の症状



気分や意欲の低下
 たいていは睡眠障害を伴い、憂うつで重苦しい気分と、不安感や焦燥感が現れます。自分が価値のない人間のように思えたり、過去を悔いたり、将来を悲観的に考えたりといった症状が続きます。また、突然理由もなく涙がとまらなくなったり、自分が劣等感の固まりのように感じることもあります。そのため、外出や人との接触を避け、人と話すのもつらく苦しいような感じがします。一日のうちでは、朝のうちにこうしたうつ状態が強く現れ、時間とともに少しずつ軽くなり、夕方には軽くなるパターンをたどります。

考えがまとまらない
 テレビを見たり、新聞や本を読んでも集中できず、会社員の場合は、会議の内容についていけなくなる、主婦の場合は、買い物が決まらない、料理の手順がわからなくなったりすることがあります。考えがまとまらないことが続くと、自分の能力のなさは自分のせいだと思い、自分を責めるようになり、「こんな自分は生きている価値がない」などと思いつめ、自殺したくなることもあります。

物忘れが多くなる
 目的の場所を通り過ぎてしまったり、待ち合わせの場所を忘れる、電車やバスなどを乗り過ごすことなど、ちょっとした度忘れが目立つようになります。

食欲の減退・増加
 一般にうつ病では食欲が低下してきます。おなかがすいているような気がするのに、食事を取る気が起こらない、そして「何を食べても、砂を噛んでいるよう」、「食べなくてはいけないと思うから、口の中に無理に押し込んでいる」と訴えることがよくあります。一方、それとは逆に食欲が増進することもあり、甘い物など特定の食べ物ばかりほしくなることもあります。

睡眠の障害
うつ病では不眠がよく現れます。うつ病による睡眠障害は寝つきが悪くなるだけでなく、夜中や明け方に目が覚めて、そのまま朝まで寝られない、悪夢にうなされることもよくあります。特に、朝早く目が覚めるのはうつ病の特徴で、いつもよりずっと早く目が覚めてしまいます。しかも、早く目が覚めたからといってすぐに起きあがれるわけではなく、布団のなかで悶々と思い悩んでいることがよくあります。逆に、夜の睡眠が極端に長くなったり、日中も寝てばかりいるといった過眠症状が現れることもあります。

自殺の危険性
 うつ病になると、気持ちが沈み込んでつらくてたまらないために、死んだ方がましだと考えるようになってきます。うつ病のときには自分の気持ちを抑える力が弱くなっていますから、普通のときなら考えられないような思い切った行動をすることが多くなります。少し症状が良くなると、死にたいと考えれば、その気持ちをすぐに行動に移せるようになるため、少し良くなったときに自殺の危険性が高くなるといわれています。

身体の症状
人によっては、のどがやたらと渇く、頭痛、頭重感、手足の震え、動悸や息切れ、頑固な便秘、インポテンツ、女性の場合は、立ちくらみ、生理不順、無月経、体の冷感などを訴えることもあります。うつ病の症状はこのようにありふれた症状であるために、多くの人は体の不調が原因だと思い、内科や婦人科を受診し、いつまでも治らないことから、まわりまわって精神科受診となります。



うつ病 経過


うつ病は一般的には次のような形で進んでいきます。「軽いうつ、軽症のうつ病」の状態で治療をはじめることが出来れば、かなり早く回復します。うつ病も、ほかの病気と同様、早期発見、早期治療が大切です。

【軽いうつ、軽症のうつ病】
・体がだるい、疲れがとれない、気分が落ち着かない、といった心身の変調を感じる。

・食欲がない、楽しさが感じられない、眠れない、追いつめられた気分になる、焦り(焦慮)が出てくる、仕事や家事がうまくできない。

・そんな自分自身に嫌気がさしてくる、自分を責める、目に見えて体重が減ってくる、朝起きるのがつらい、便秘がちになる。
   
【治療を受けながら休養を取れば回復可能
・誰かに相談したり、かかりつけの医者に診てもらったりするが、原因がわからない、焦り(焦慮)が強くなる、出勤できない、起きられない。

・何もかもうまくいかないのは、甘えているからだ、自分はなまけものだ、と自責の念が強くなる。
  
【入院が必要
・つらさや苦しさを感じるようになる、自責の念もますます強くなる、じっとしていられない、いたたまれないような強い焦慮が現れる。

・まわりの人に迷惑をかけている、自分などいなくなった方がいい、と感じ出す。

・こんなに苦しいなら、死んだ方がいい、ほかの人に迷惑をかけたくない、と考え出す。




うつ病 治療


 うつ病の治療は、早期に適切な治療を受けることが必要です。その症状が長期間以上続くようなら必ず受診することです。

 うつ病に人に向かって「頑張って」「そんなにおちこまなくてもいいのでは」などという叱咤激励は禁物です。患者さん本人は頑張りたくても頑張れずに悩んでいるのですから、逆に本人を追いつめることになります。周囲の人に出来ることは、じっくり話を聞いてあげることです。

 また落ち込んでいるからと、酒の席や旅行などに連れていくのも逆効果です。楽しそうな家族連れなどを見たために、「自分はどうして病気なのだろう」などと考えてしまい、うつ病が悪化することがあります。

 そして、うつ病で、周囲の人が一番配慮しなければならないことが、「自殺の防止」です。特に治りかけに自殺が多いのも、この病気の特徴のひとつです。気分の面では、まだうつ状態が残っているのに意欲(行動)の面だけが回復したため、自殺に走るケースがよくあります。治りかけが大切ですから、少しよくなったからといって仕事をさせないなどの配慮が大切です。


うつ病の治療法
 うつ病の治療には「十分な休息」、「抗うつ薬の服用」、「精神療法」の3つ面の治療を行います。

十分な休息をとる
 うつ病は、脳の機能が低下している状態です。十分な休息をとって脳を休ませます。「休息」と言っても2、3日休むとか休日に何もしないで寝てるなどというのではありません。会社員なら仕事を休職して、主婦なら家事を、子供なら勉強などを全くしないで数週間から数ヶ月休息をとります。そして、休んでいる間は、あまり色々なことを考えずのんびりとして過ごし心身の疲れを取り除きます。

 休みの間は、何もしないでぼーっとするのが一番です。気兼ねなくのんびりごろごろできれば、それが回復への近道です。間違っても「自分はこんなに怠けていていいのだろうか」などと気に病んだり自分を責めたりしないようにしてください。「休むことが治療」であり、「病気を治すため」にごろごろしていることをしっかり認識しましょう。

抗うつ薬の服用

 うつ病は脳内神経伝達物質の機能障害が関係していると考えられています。そうした状態を改善し脳内の神経伝達物質の働きを回復するために薬物の治療が効果的です。

 抗うつ薬(抗うつ剤)にはいろいろな種類があります。投薬には医師がそれぞれの抗うつ薬の特徴を考え患者との相性を見ながら、そのときどきで適切だと思われる量を処方していきます。抗うつ薬は、最初は少量から服用を始め、効果を見極めながら患者さんに合っているようであれば増量していきます。

 うつ病で処方される薬は、他の病気で飲む薬のような即効性はありません。薬による効果が感じられるようになるには、処方通りに飲みつづけて早くても一週間はかかります。また十分に効果が感じられるようになるには4〜6週間かかります。
 これに対して、抗うつ薬の副作用はすぐに現れます。そのせいで薬が効いてないと感じたり、副作用の影響で「うつ病が悪化した」と勘違いし、服用を勝手に止めてしまう場合があります。しかし、早期に抗うつ薬を中止してしまうと、約半数の人は再発してしまいます。しかも、再発を繰り返せば繰り返すほど、一層、再発しやすくなるという傾向がありますので、きちんとした治療を受けることがたいへん重要です。

精神療法
 精神療法とは、うつ病の患者さんの心理面にアプローチする治療方法です。うつ病は、抗うつ薬による薬物療法だけでも、精神療法だけでも治すことは出来ません。薬物療法と精神療法は、いわば車の両輪のようなものです。まず初めに薬物療法によってうつ病の症状を落ち着かせ、自分を冷静に客観的に見られるようになってから精神療法を開始するのが一般的です。

 うつ病の治療で、精神療法が中心的になるのは、うつ病の程度が比較的軽度で、なおかつ、環境、役割の変化や喪失体験といったストレスの原因がはっきりしている場合です。

 うつ病の精神療法は定められた理論や方法に従って患者自身が問題を解決できるよう医師や臨床心理士が援助、手助けをします。その基本は、病気や症状、その経過の説明、服薬の必要性、薬の副作用の説明などをして、うつ病という病気をよく理解させ、患者さんには自分自身で、どのようなストレスでうつ病になったのか、性格や考え方にどのような問題点があったのか、生活習慣のどこに問題があったのかなどを見つめ直します。

 精神治療には、認知行動療法が、有効な手段としてしばしば用いられます。
 認知行動療法は、考え方や行動のクセを改めて、落ち込みやすいといった気分を変えていきます。ある状況で自然に起こってくる思考やイメージを通して、自分の心のクセや思考のパターンを知ることからはじめます。そのことによって、憂うつな気分の原因である非適応的思考やマイナス思考から抜け出し、気分の改善を図ります。

 そして、ある程度、意欲、活動性が回復した段階で、散歩、レクリエーション、趣味などへ患者さんを導いていき、行動することによって面白いという「快」の感覚が自然に生じてくるという事実に気づくようにします。そのことによって、さらに活動性を回復させ、行動から生じる「快」の感覚が物事に対する興味、喜びの改善につながっていくようにします。



うつ病 種類


季節性うつ病
決まった季節に現れ、毎年その季節になると、うつ病が現れる。特に冬に多く、日照時間が短くなると発症します。一般に、緯度が高くなるほど多くなる傾向にあります。春になって再び日照時間が長くなると、自然に治ることが多いようです。

引越しうつ病
引越しや転勤など、慣れ親しんだ場所を離れ、環境が変化したことをきっかけに発症します。家の新築などで、巨額のローンを借りた場合も、負担が重荷となって発症することがあります。

荷おろしうつ病
家のローンの完済、長年争ってきた裁判の決着、家族や自分の病気が治ったあとなど、長年抱えてきた荷物をおろしたあとに現れます。

仮面うつ病
(身体症状の仮面をかぶったうつ病)
精神的な症状はあまり目立たず、肩こりや、腰痛、そのほかの身体的な不調が強く現れます。そのためうつ病とは気づかれないことが多くあります。

軽症うつ病
内面的にはうつ病になっていても、表面的には深刻さが見られず、人当たりも良いといえます。しかし、必ずしもうつ病が軽いというわけでもないため、注意が必要です。「微笑みうつ病」とも呼ばれます。

産後うつ病
産後陥りやすく、特に初産の場合に多く見られます。なれない育児への不安、授乳や夜泣きなどによる不眠、ホルモンバランスの変化など、産後の身体、精神的変化がきっかけとなります。

疲憊(ひばい)うつ病
仕事や勉強などに疲れた果てたときにおこるうつ病です。毎日ノルマをかけられている営業マン、受験生などに発症しやすいといわれています。

退行期うつ病
更年期、向老期に現れるうつ病。体力、気力ともに下り坂にある年齢にもかかわらず、若いころと同じような無理をしたり、過大な負担がかかったりすることで発症します。