神経症は、薬の治療では治ったようでも間もなく再発して慢性化します。この病気は精神的に気のせいで起こるもので、けっして神経の衰弱から起こるものではありません。これは主として、ある特殊の気質の人に起こるもので、神経症になりやすい人の神経質性格(内向的、自己内省的、心配性、小心、敏感、完全主義的性格等)を基盤にした特有の心理的メカニズムで発症すると考えたのが森田療法です。
その心理的メカニズムとは、精神交互作用であり、思想の矛盾と呼ばれる不可能を可能にしようとする心の葛藤です。これを治療するには、「あるがまま」を受け入れる、つまり不安や症状を排除するはからいをやめ、そのままにしておく態度を養うことが必要です。
不安を抱えながらも、生活の中で必要な事(なすべきこと)から行動し、建設的に生きることを学び、実践するのです。「あるがまま」という心を育てることによって神経症を乗り越えていくのが森田療法の主眼であり、生き方の“再教育”とも呼ぶことができるでしょう。
病気として治療するのではなく、健康者として取り扱えば容易に治ります。頭痛持ち、血の道症、持病の癪、不眠、耳鳴り、めまい、心悸亢進、脈摶結帯、胃のアトニー、下痢便秘、腰の痛み、性的障害、頭がぼんやりして読書ができない、手がふるえて字が書けない、赤面恐怖、不潔恐怖、その他さまざまの強迫観念などの症状は、従来の医学でいう神経の過敏や衰弱、意志薄弱、精神の変質等ではありません。
何かの機会に、普通の人のだれにでも起こる不快の感覚をふと気にし始め、のちには自己観察が強くものごとを気にするという神経質の性質から、常に取り越し苦労をし、そのことばかりに 執着するために段々とその不快感覚が憎悪するようになったものです。それは、夢におそわれているときのように事実ではないにもかかわらず本人の身にとっては実際に重い病気にかかって いるような苦悩となります。
従来の医学では身体の変態、異常から他動的に起こると考えられていますが、実は自分自身の心から自動的に起こるのです。
(以上Mental Health Web
Siteに掲載の”森田療法”から抜粋。) |
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