躁うつ病(双極性障害)

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躁うつ病(双極性障害)とは


 躁うつ病 (双極性障害)は、躁状態とうつ状態を繰り返す精神の病気で「気分障害」の一つです。気分障害とは、文字通り、気分が沈んだり、「ハイ」になったりする病気です。統合失調症と並んで、二大精神疾患と言われています。

 躁うつ病 とは、文字通り「躁」状態と「うつ」状態を交互に繰り返す病気のことを言います。「躁状態」というのは明るく活動的で気分爽快な状態で、「うつ状態」は気分が重暗く落ち込んだ状態です。

 躁うつ病 の特徴は、悲観や落ち込み、気分の高まりが、普通に体験する出来事にしては強く現れすぎたり、出来事とは無関係に感情の変化が現れ、自分でコントロールできなくなります。躁うつ病になると対人関係や、仕事の遂行能力が損なわれ、家族もいろいろなトラブルに巻き込まれることがあり、自らも苦しむことになります。

 躁うつ病3つに別けられ、躁とうつ状態の両方が強く現れるもの(循環系)と、うつの症状が主体のもの(うつ病型)、また躁状態だけが現れるもの(単極型躁病)があります。

 一般には、うつ状態と躁状態のいずれかが、症状のない回復期を伴いつつ、繰り返していくことが多く、躁状態から次の躁状態までの間隔は数ヶ月単位という場合から、数十年という場合もあります。また、うつ状態と躁状態が混ざって存在する混合病相が生じる場合もあります。また、症例によっては季節に左右されることもあります。うつ状態から急に躁状態になることもまれではなく、一晩のうちに躁転することもあります。

 躁うつ病 は、うつ病ほど広範に見られる病気ではありませんが、決してまれな病気ではありません。自殺率や、遺伝性が高いことが指摘されており、患者さんが特定の家系に集中することもあります。躁うつ病は、一旦回復しても再発することが多く、生涯にわたる薬物投与による予防が必要となることも少なくありません。

 躁うつ病 の原因はセトロニンやノルアドレナリンなど、脳内の神経伝達物質の量の病的な変化や、これらに反応する部位の異常、遺伝、ホルモン代謝異常、それに心理、社会的諸要因などが複雑にからみあって発祥するといわれています。しかし本当のところはまだ解明されていません。



躁うつ病(双極性障害) 症状


 躁状態とうつ状態が交互に現れる躁うつ病では、うつ状態とそう状態が同じくらいの間隔でやってくるもの、うつ状態が長くて、躁状態が短いものや、その逆のケースなど、色々なパターンがあります。

 躁状態になると、すべてが楽観的になり、気分は爽快で、気分が充実し、睡眠時間が少なくても元気に過ごせます。口数が増え、しゃべり方も流れるようにスムーズになり、あらゆるものに興味を示します。表情もいきいきとし、自分が偉くなったような、何でもできそうだという誇大妄想に陥ります。

 自分が大金持ちになったような気持ちになり、非常識的な浪費、ギャンブルなどに走り、問題を起こすこともあります。思考、行動面でも抑制がきかなくなり、考えが次から次と湧き出し、朝から晩まで友人を訪ね歩いたり、深夜でもおかないなく電話をかけて話をします。また、こうしたことを非難されると、ささいなことでも興奮し、攻撃的になります。

 さらに症状が進むと、落ち着いていられず、大声でうたを歌ったり、踊りまくったりという行動も見られます。こうしたことを周囲から非難されたり、無理やり押さえつけようとすると、激しい興奮状態になり、乱暴するとことあります。

 こうした気分の良すぎる状態は「躁」と呼ばれ、他人から見れば、問題があるのは明らかであっても、本人はなかなか、自分の気分が問題を生じさせている事に気付きにくいものです。躁うつ病では、気分が大きく落ち込んだ状態では、うつ病と同様の症状ですが、「躁」の存在が、躁うつ病をうつ病と区別する、躁うつ病の特徴的な症状です。



躁うつ病(双極性障害) 原因


 躁うつ病の原因は遺伝的な要因が大きいことが知られています。それは発生頻度の統計からもわかります。躁うつ病の一般人における発病率は約3%、兄弟・姉妹が発病している場合の発病率は約10%、そして、親が躁うつ病でその子どもが躁うつ病となる発病率が約10%となっています。

 病気の遺伝性を調べる研究としては、双子(一卵性双生児)の研究がポピュラーですが、一卵性双生児の片方が躁うつ病の場合、もう片方も躁うつ病になる確率は85〜89%という最近の報告があります。

 こうした遺伝的な要因とあわせて、一般的には循環気質と言われる性格の人たちがかかりやすいといわれます。例えば、体型的には肥満型で、情け深く社交的であるなど、比較的行動力あり活発な反面、時としてすごく落ち込んでしまう、という人たちに多いとされています。このように、もともと躁うつになりやすい体質の人が社会生活上でストレスなどに接して病気が発症してしまうようです。

 また、躁うつ病の物理的な原因としては、脳の情報伝達物質であるセロトニンの乱れによって脳活動が正常に行われなくなることで、うつ病や躁うつ病になるということがわかっています。なぜ、脳のセロトニンがなぜ不足するのかという根本的な原因はわかっていませんが、ストレスや遺伝だという説もあるようです。


躁うつ病(双極性障害) 治療


 躁病やうつ病と違い、躁うつ病の場合は治療しないでいると回復する見込みはありません。躁うつ病は時期によって症状も変わりますから、常に状態を観察し、その人の状況に応じて適切な薬を投与する必要があります。

 躁うつ病の治療の基本は薬物療法です。気分安定剤を用いて、気分の変動が大きくなりすぎないようにします。例えば、うつの症状が強い時には、抗うつ薬が用いられます。幸いにも、躁うつ病を予防する薬は開発されていますので、薬を確実に飲み続けることで発症を押さえることが可能になっています。

 うつ状態は通院でも充分に治療可能なことが多いのですが、身体的に衰弱が著しい場合や、自殺のおそれの強い場合には入院治療が必要となります。しかし、躁状態の場合には、自分の気分が問題を生じさせている事に気付いていない場合も多く、常軌を逸した行動をとることもあるために、入院治療が必要です。

 躁うつ病は治療をしないと、自然治癒は期待できません。治療を受けないと、一生、躁とうつを繰り返すことになります。しかし、治療を受ければ、多くの場合、気分の変動をコントロールでき、支障なく日常生活を送ることができます。


躁うつ病、受診のめやす
うつ状態と躁状態の両方を持つ躁うつ病では、躁状態のときは、病気という自覚がないのが特徴です。軽い躁状態のときには、周囲が気づいてあげて、早めに受診させることが大切です。躁状態のときは、気分が高揚し、自身過剰で、なにもかもがうまくいくと思っているため、受診を勧めたりすると、イライラしたり、怒りっぽくなることもありますが、暴れるなどといった激しい躁状態に進行する前に、強く受診を促してあげてください。


躁うつ病、周囲の人の対応
躁うつ病の治療では、躁状態を抑える薬と、気分を安定させる薬などの薬物療法が中心となります。服用中は、気分が安定してくるものですが、これを「治った」と誤解して、自分や家族の判断で薬を止めてしまい、ぶり返すことがよくあります。医師から指示が出るまで、薬はきちんと服用するようにしてください。

 また躁うつ病の人を持つ家族は、その症状に驚き、歯がゆさがつのることも多いと思いますが、「病気にかかかっている」という認識を忘れずに、励ましたり、叱ったりすることが大切です。