摂食障害(拒食症と過食症)

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摂食障害とは


 摂食障害 は以前は中高生の女の子が食事を食べずに、痩せてくる病気として「思春期やせ症」という言葉で呼ばれていたこともあります。約1000人に1人を超える有病率があります。最近では成人期に発症することもあり、特に、結婚後や出産後に過食症になるケースも多くなっています。

 摂食障害 は拒食症と過食症に大きく分けられます。拒食症は、食べることを極端に少なくし、周囲から見るとやせすぎているのに体重が増えることを恐れ、低体重を維持しようとする行動が目立つ病気です。

 一方過食症は、一度に大量に食べてしまい、そのことを非常に後悔し、気持ちが「ゆううつ」になったり、いらいらしたりし、太ることを恐れて吐いたり、下剤を使ったりすることで、食べたものを外に排出する行動が目立つ病気です。


 摂食障害 は、特に若い女性に多くみられる過度のダイエットだけではなく、人間関係の問題による心理的なストレスや、不適応、コミュニケーションの不全などが原因とされている精神的な依存症の一種です。いずれにしても「食事のコントロールが難しい」病気ですが、治療すれば良くなっていく病気です。

 症状は長期にわたる栄養失調状態により、やせすぎ、無月経、低血圧、体毛の密生化、むくみ・しびれ、腹部不快感など様々な症状がでます。 

 摂食障害 の拒食や過食は身体的な変化もあり、比較的診断がしやすいのですが、その奥にある、「衝動的になりやすい」「自傷行為が止められない」などの見付けにくい症状を見落としてしまうことがあります。一部分の症状だけではなく、全体をしっかりみて精神科的な正しい診断をつけることが大切です。


摂食障害 症状


摂食障害 の症状は、拒食症と過食症に大きく分けられます。同じ拒食症、過食症などでも、患者によって症状はさまざまです。


拒食症の典型的な症状

 拒食症の典型的な症状は、ダイエットから始まるケースがほとんどで、その根底には太ることに対する恐怖のよう感情があります。とにかく意思が強く、カロリーの高いものは絶対に食べようとしない、しかし食欲は本能的であるため、完全に抑えることはできません。

 そのために逆に食べることに執着して、飽きもせず綿密なカロリー計算を繰り返したり、他人にはきちんと食べることを強要したりします。 


 また、外食なら食べられる、一人の部屋でなら食べられる、家族が寝静まってから盗み食いをするなどの反動的な行動が見らます。しかし、決まってその後に、下剤を使ったり、吐いたりして摂取したカロリーをなかったことにしようとします。


拒食症が進むと

 せっかくとったカロリーをなかったことにするようなことをしていたのでは、当然のように痩せてきますが、きれいになるどころか骸骨のようで病的になってきます。

 それでも本人には、醜く痩せているという意識はなく、周囲の人が「少し痩せ過ぎじゃないの」と心配しても本人はそう思わず、「まだ太ってるからもっと痩せなくては」と思っているようなのです。そして自分が病気であることを認めたがりません。


 また、この病気の場合は痩せるのと反比例して活動的になっていくという特徴があります。熱心に仕事に取り組んだり、いくつもの習い事を始めたり、ポジティブな生活をしているように見えるので、周りの人も元気なんだと病気のことは気付きません。

 しかし、ここまでくると、心だけでなく体にも症状が現われてきます。ホルモンバランスが崩れて月経が止まったり、骨粗しょう症にかかったりします。そして脳内物質の関係から、今度は食べようと思っても本当に食べられなくなり、命までも危うくなってしまいます。


過食症の症状

 過食症は、拒食症と正反対に見えますが、その根底に潜む心理は拒食症と共通しています。過食症の場合もダイエットがきっかけで、1年以上食べずにいた甘いものをひと口食べたとたん、過食が始まったりするケースが多いようです。そして過食症の場合は痩せる一途をたどる拒食症と違い、やせては太るというリバウンドを繰り返します。

 食べるときは、冷蔵庫の中身をすべて食べ尽くす、スナック菓子を一度に10袋も食べるなど、異常な量の食べ物を口に入れるようになります。また、拒食症と違い、カロリーの高いものでも口にしますが、おいしいと感じたり、満足感は感じられず、すぐに食べたことに対する後悔の念に襲われ、その結果、指を口に突っ込んで吐いたり、下剤を常用するようになります。

 そして、自分で食欲をコントロールできない自己嫌悪から、少しずつ精神状態がうつになり始め、この頃になると自覚症状も現れてきます。




摂食障害 治療


 治療の基本は、摂食障害を起こさせた心に潜む問題を取り除くことが大切です。それには精神科医や心療内科医などの専門家の力が必要です。

 特に拒食症の人の場合は自分が病気だとは認めたがらないので、病院に行かせるだけでも難しいことが多いため、家族や友人の温かい協力で、本人の言いたいことをじっくり聞いて、軽い気持ちで病院に行けるようにするのがよいでしょう。



治療を始める前に

 まず始めに、患者がどうして治療が必要なのかをよく理解することが大切です。まず神経性食思不振症や過食症についての正しい知識を得ます。

 低体重や過食を続けることで、健康上の問題だけでなく、学業や生活上のこと、対人関係など、さまざまな犠牲が払われていますので、この病気を治すことが、有益なものになることを理解します。



治療の目標と確認

 治療の目標はまず、適切な食事のパターンを考えて、体重を回復させることです。自分自身で適切に食事が出来るように学んで行きます。このためには、一日の食事や行動予定を立て、目標を設定し、どれくらい実行できたかを確認していきます。


入院が必要な場合

 治療の多くは通院という形で行われます。痩せが進むと、いくら食べようと思っても、身体が食べ物を受けつけなくなる段階があります。加えて体重が著しく減少し、生命的に危険な状況になれば入院して、点滴、液体栄養剤などで体重を増やすことが必要になります。

 また、過食や嘔吐を繰り返すことで、血液中のカリウム値が異常に低くなると、不整脈などで突然死を来す恐れがありますので、入院して内科的な治療が必要になることもあります。


 また、家族から離れて治療することが望ましいときや、あるいは過食への衝動が強くて、食べ物の管理が出来ないとき、抑うつ気分が強く自傷行為が抑えられないときなども、入院治療が役に立つことがあります。


再発の予防

 摂食障害には何らかの心理的な理由があります。たとえば、目標としていたことが実現できなかったり、友人や異性との関係がうまくいかなかったりと、さまざまなつまずきが自己評価の低下に結びつき、過食という形でその苦しさを表現したり発散したりしていることがあります。

 このような心の問題に気づき、それを異常な食行動に結びつけずに、適切に解決する方法を学びます。このことが、病気の再発を予防し、ひいてはよりゆとりのある新しい生き方にもつながって行きます。



治療は焦らず、あきらめず

 摂食障害は年単位でゆっくり回復していく場合が多く、回復していく過程でも一時的に悪くなるなど、揺れ戻しがあるものです。そんなときには決して自暴自棄になったり、あきらめたりせずに、治療者を信頼し、家族に協力してもらいながら、病気に立ち向かうことは回復の近道です。



摂食障害 原因


 摂食障害の直接のきっかけは、ダイエットであることが多いようです。ダイエットがエスカレートし、いつの間にか摂食障害になっているというものです。

 しかし、ダイエットは原因の1つですが、引き金であって、決してダイエットだけが原因ではありません。なぜならダイエットをしても摂食障害にならない人もたくさんいます。

 摂食障害においては、性格、家族関係、家庭環境が特に問題になると考えられています。特に、母親との関係が問題となることが多いようです。

 よく言われるのは、2〜5歳児期の人格基礎の形成期に母親からの安全、安心の欲求や愛情が充分満たされていない場合です。また、父親が暴力を振るったり、アルコール中毒など、いわゆるアダルトチルドレンなどのような両親のもとでは摂食障害になりやすいと考えられています。

 幼児期というのは、人格形成に大きな影響を持つ時期ですから、このような家族の場合、子供への影響はどうしても大きく悪い方向に出てしまうようです。