ナルコレプシー

TOPナルコレプシーとは


ナルコレプシーとは


 ナルコレプシー とは、通常の起きている時間帯に自分では抑制できない眠気が繰り返し起こるのが特徴の睡眠障害です。突然の筋力低下や睡眠麻痺、幻覚を伴います。

 日本では「過眠症」「居眠り病」とよばれることもあります。まだ一般への知名度が低く、専門医も非常に少ないため、患者に対する正しい診断、治療が受けらにくいことや、まわりの人々からの理解が得られにくいなど、罹患者には大きな負担がかかっているのが現状です。


 また、ナルコレプシー が発病していることに気づかず、自分の居眠りのことで苦しんでいる患者さんも多いようです。ナルコレプシー の代表的な症状である日中の居眠りは、周りから見ればただの「居眠り」に見えてしまうため、周りの人から理解されにくく、一人で悩みを抱え込んでしまうパターンも多いようです。

 ただし、病気に気づき、専門医の指導の下、適切な治療を受けていけば日常生活に支障をきたすことはありません。



ナルコレプシー 原因


 ナルコレプシー の原因はまだはっきりとは明らかにされていませんが、最近の研究では、オレキシンという脳内物質の欠乏が、この病気の発症に関わっていることが指摘されています。

 オレキシンは視床下部から分泌される神経伝達物質で、オレキシン遺伝子を破壊したマウスの実験では、ナルコレプシー症状が現れることが確認されています。

 また、オレキシン神経細胞を破壊し人為的にナルコレプシーを引き起こしたマウスに対し、オレキシン遺伝子を導入したり、脳内にオレキシンを投与することでナルコレプシー症状が改善されることも確認されています。

 そして、ナルコレプシー患者の研究においても視床下部のオレキシンを作る神経細胞が消滅していることが確認されています。

 ナルコレプシー の90パーセント以上の患者で髄液中のオレキシンが検出されないことも報告されています。また、ナルコレプシーの患者は睡眠時無呼吸症候群にかかっている人が多いことも確認されています。しかし、睡眠時無呼吸症候群はナルコレプシーの主症状ではありません。




ナルコレプシー 症状


 ナルコレプシーの代表的な症状は、「日常的に続く日中の強い眠気と居眠り」と「睡眠発作」、「情動脱力発作」と呼ばれているものです。


日中の強い眠気と居眠り
「眠気と居眠り」というと、なんだと思うかもしれませんが、ナルコレプシーにかかっている人の「眠気と居眠り」は、普通の人のそれとはまったく違い、我慢できない眠気です。

 前の晩に十分、睡眠をとっていたとしても、日中には耐え難い眠気が襲ってきます。それも1度だけではなく、1日に何回も眠気が襲ってきます。

 特に、発言しない会議など、普通の人でも眠くなるような状態だと、それがさらにひどくなります。最初の方は気合いで耐えていたとしても、そのうち耐え切れなくなり、居眠りしてしまうようなことになります。


睡眠発作
ナルコレプシーの症状には瞬間的に眠りに落ちてしまう「睡眠発作」があります。この睡眠発作がおこると、「眠い」と思う暇もなく、一瞬で眠ってしまいます。発作は1日に何度も起こることもあれば、ほんの数回しか起こらないこともあります。

 1回の発作で眠っている時間は、普通30分以下です。この発作は退屈な会議やハイウエーでの長時間のドライブ中などの単調な状況におかれたときに最も起こりやすくなります。

 しかし意図的に短い仮眠を取ったときにはすっきりと目覚めます。そして、居眠りから目が覚めたあとは、かなり頭がすっきりとし、眠気もほとんど感じなくなるようです。ただし、数時間もたつと、また耐え難い眠気が襲ってきます。そして耐え切れずに居眠りしてしまうようになります。


情動脱力発作
 「情動脱力発作」というのは、興奮したとき、特に大笑いしたときなどに、いきなり体の筋肉の緊張が抜けてしまうことをいいます。

 この意識喪失を伴わない突然の筋力低下は怒りや恐怖、喜びや笑い、驚きなどの突発的な感情が引き金になるとみられます。急にぐにゃりと腰が抜けたり、持っているものを落としたり、地面に倒れたりします。

 この症状はレム睡眠中にみられる筋肉の弛緩と似ており、程度こそ軽いものの、ちょうど「笑うと力が抜ける」ときの状態に似ています。ときおり、ちょうど寝入ったばかりや目が覚めた直後に体を動かそうとして動かせないことがあります。

 睡眠麻痺と呼ばれるこのような金縛り状態になると非常な恐怖に駆られますが、この状態は他の人に体に触れてもらうと治ります。周りに人がいなくても、麻痺は数分後には自然に治まります。


 ちなみに、ナルコレプシーの人が居眠りしている時には、軽く声をかけるだけですぐに目を覚まし、そのまま仕事を続けたりします。この居眠りしていてもすぐに起き、寝ぼけることがない、というのもナルコレプシーの特徴です。



ナルコレプシー 治療


ナルコレプシーの治療は基本的には、生活指導、薬物療法が主流になります。


生活指導
生活指導は、睡眠記録表に24時間の睡眠、覚醒状況を記録し、医師が規則正しい生活をするようにアドバイスをします。規則正しい生活、ことに夜間の十分な睡眠時間を確保することは、症状の軽減には不可欠です。

 また、不規則な生活は日中の眠気や睡眠障害を悪化させてしまいます。できるのであれば日中の昼休みなどに短時間に目をつむり、計画的に昼寝をすれば眠気は軽くなります。


薬物療法
薬物療法には精神刺激薬を用います。よく使われるのはメチルフェニデート(リタニン)という薬です。この薬は作用時間が短いため(早く代謝され体外に排泄される)、朝と昼の2回服用する必要があります。ペモリン(ベタナミン)という、やや作用時間が長い薬も使われます。このなかでよく使われているのは、クロミプラミン(アナフラニール)、イミプラン(トフラニール)などの抗うつ薬です。

今のところナルコレプシーを完治治療する方法は見つかっていません。しかしナルコレプシーの薬を飲めば症状は抑えられます。薬を飲み続けているうちに症状がだんだんと軽くなっていくケースが多いので、諦めずに気長に薬を飲み続けることが大切です。

 日常の生活では、休み時間に20分くらいの昼寝をとる習慣をつけることが大切です。


ナルコレプシー 検査と診断


 自覚症状として「1日に何度も強烈な眠気が襲ってきて、居眠りしてしまう。それが毎日のように続き、しかも半年以上継続している」、また「興奮すると、筋肉の緊張が抜けてしまう」というような状況があるような場合、ナルコレプシーと診断されます。

 ナルコレプシーは、診断がつかないでいると、職場での居眠りのために怠け者あるいはやる気がないなどと誤解されがちです。また眠気が交通事故などの原因になることもあります。両方出ている場合はもちろんですが、片方だけしか出ていない場合でも、疑いのある場合は専門医の診察を受けて診断を確定し、早めに治療を開始することが重要です。

 診断は症状に基づいて行いますが、別の病気が原因で同じ症状が起こることもあります。睡眠麻痺と幻覚は、特に問題がない健康な成人にも起こります。

 検査は昼間の眠気を客観的にとらえるために、睡眠潜時試験という検査が繰り返し行われます。これは、昼間2時間おきに脳波検査室で横になり、暗くしてから眠るまでの時間の脳波を調べるものです。脳波上で睡眠のパターンが現れるまでの時間が短いほど、眠気が強いと判定されます。



ナルコレプシー Q&A


 ナルコレプシーの有病率はどのくらい
 ナルコレプシーは遺伝しますか
 居眠りの原因となる病気にはナルコレプシー以外にどんなものがありますか
 ナルコレプシーはどんな治療をするのですか
 ナルコレプシーは完治しますか
 精神賦活剤には副作用がありますか
 ナルコレプシーの治療にはどのくらいかかりますか
 ナルコレプシーというのはどんな意味ですか


ナルコレプシーの有病率はどのくらい。
 日本人のナルコレプシーの有病率は1万人当たり16人〜18人という研究報告があります。この数値の開きは調査対象地域や対象年齢層の違い、調査年の相違などによるものと考えられ、一般的には約600人に1人、全国で10〜20万人と考えられます。

 発症年齢は、10代から20代前半に集中しており、特に14〜16歳にピークがあります。男女の有病率の差はないと考えられていますが、病院で治療を受けている患者では男性の比率が高くなっています。

 この理由は男性の方が女性より会社勤務など社会的に活動しているため、周囲からも指摘をされることが多いためと考えられます。


ナルコレプシーは遺伝しますか。
 一般に、ナルコレプシー患者がいない家族と比較して、ナルコレプシー患者のいる家族での発現率は10倍程度高いというデータがあります。

 ナルコレプシーの発症原因は、未だに十分に解明されていません。その発症には、様々な因子の関与が考えられており、遺伝もその因子のひとつですが、ナルコレプシー患者のすべての子供に遺伝したり、隔世遺伝したりするというものではありません。 ナルコレプシーの発症には遺伝だけでなくストレスなどの要因が発症に関係すると考えられます。


居眠りの原因となる病気にはナルコレプシー以外にどんなものがありますか。
 ナルコレプシー以外に日中に強い眠気に襲われる疾患には、睡眠時無呼吸症候群、睡眠不足、真性過眠症、特発性過眠症、反復性過眠症(周期性過眠症) 、覚醒不全症候群、うつ病(双極性) 、季節性うつ病、周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群、薬物・アルコールの慢性使用、身体疾患・神経疾患の一部、心因性などの精神障害、概日リズム睡眠障害などがあります。


ナルコレプシーはどんな治療をするのですか
 ナルコレプシーの治療は基本的には、生活指導、薬物療法が主流になります。生活指導は、睡眠記録表に24時間の睡眠、覚醒状況を記録し、医師が規則正しい生活をするようにアドバイスをします。規則正しい生活、ことに夜間の十分な睡眠時間を確保することは、症状の軽減には不可欠です。

 また、不規則な生活は日中の眠気や睡眠障害を悪化させてしまいます。できるのであれば日中の昼休みなどに短時間に目をつむり、計画的に昼寝をすれば眠気は軽くなります。


 薬物療法には精神刺激薬を用います。よく使われるのはメチルフェニデート(リタニン)という薬です。この薬は作用時間が短いため(早く代謝され体外に排泄される)、朝と昼の2回服用する必要があります。ペモリン(ベタナミン)という、やや作用時間が長い薬も使われます。このなかでよく使われているのは、クロミプラミン(アナフラニール)、イミプラン(トフラニール)などの抗うつ薬です。


ナルコレプシーは完治しますか
 今のところナルコレプシーを完治治療する方法は見つかっていません。しかしナルコレプシーの薬を飲めば症状は抑えられます。薬を飲み続けているうちに症状がだんだんと軽くなっていくケースが多いので、諦めずに気長に薬を飲み続けることが大切です。 

 日常の生活では、休み時間に20分くらいの昼寝をとる習慣をつけることが大切です。


精神賦活剤には副作用がありますか
 副作用はありますが、医師の処方どおり自分の体に合った量を正しい時間にのめば、副作用はごく軽くてすみます。副作用として多いのは動悸、頭痛、胃障害、食欲減退、時に逆説的傾眠といって、服用後15〜30分頃に逆に眠気が強くなることがあります。

 また夜の睡眠を充分にとらないで精神賦活剤をたくさん服用すると、入眠時の幻覚が強まったり、精神不安定が起こったりすることがありますので、医師の指導を守って適正量を飲むことが大切です。


ナルコレプシーの治療にはどのくらいかかりますか
 規則正しい生活と長期間の通院、服薬が必要になります。、医師の処方どおり自分の体に合った量を正しい時間にのみ治療を行うことで、症状は10年、20年と経つうちに軽くなる傾向があります。

 10年間治療を続けると1割くらいの人で眠気が非常に軽くなり、2割くらいは情動脱力発作が、約3割は入眠時時幻覚が、約4割の人に睡眠麻痺が、それぞれ薬がいらない程度に軽くなります。


ナルコレプシーというのはどんな意味ですか。
 ナルコレプシー(narcolepsy)は、一般に「居眠り病」と呼ばれています。ナルコレプシーという病名は、1880年にフランスの医師ジェリノーにより名付けられました。「ナルコレプシー」の「ナルコ」は“麻痺、脱力”を「レプシー」は“発作”を意味するギリシャ語に由来しています。 従って「ナルコレプシー」という言葉は脱力発作を意味していますが、「ナルコレプシー」という言葉が世界中で使われています