アルコール依存症

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アルコール依存症 症状


 長年にわたり多量のお酒を飲み続けると、血中のアルコール濃度が低くなると、またお酒を飲みたくなるという欲求が強くおこります。その結果、飲まないと不眠や手のふるえ、発汗などの神経症状や問題行動が現れ、激しい場合は、けいれんを起こしたり、意識がもうろうとして幻視や幻聴を起こすこともあります。

 そして、この飲酒欲求を回避したいために、アルコールに頼らざるを得ない状態をアルコール依存症 といいます。アルコール依存症 のタイプには、次のようなものがあります。



単純酩酊タイプ

 気分が高揚し、よくしゃべる、気が大きくなる、そのうちにろれつが回らない、ふらつく、急に泣いたり、大笑いするといった、いわゆる酔っ払いの症状です。これがエスカレートすると、次の問題行動タイプに移行することがあります。



問題行動タイプ(酒乱型)

 いわゆる酒乱タイプ。飲むと暴れたり、因縁をつける、からむなど、異常な行動をとります。本人は部分的に、あるいはまったく覚えていません。覚めたあとで周囲の人に酒席での行動や言動を教えられて初めて自分の醜態を知ります。



怠業タイプ

 飲酒時にはたいした問題行動はありませんが、二日酔いのため翌日の約束をキャンセルする。仕事に遅刻するなどをくり返すタイプ。主婦のアルコール症を「キッチンドリンカー」呼びますが、これは飲酒のために家事や仕事ができなくなるタイプです。


 アルコール依存症 では、日常生活、社会生活、身体面の障害など、アルコールがもととなった障害が現れます。単純に「飲みたい」という欲求だけではなく、アルコールを飲まなくなると手の震え、不眠、発汗などの神経症状や問題行動が現れ、精神、身体面の両方で、アルコールとの依存関係が形成されていきます。

 既にアルコール症に陥ったあとでも、習慣的な飲酒から依存症になった節目がわからないため、アルコール依存という認識がないまま、アルコール摂取を続けます。治療をしないままアルコール摂取を続けると、肝機能障害などの内臓疾患やアルコール性精神病へと進行します。
 



アルコール依存症 診断


 過去1年間のある期間に、次の6項目のうち3つ以上に該当する場合はアルコール依存症を疑ってみる必要があります。


1.アルコールを摂取したいという強い欲望あるいは強迫感がある。

 たとえば、終業前になると決まって飲みに行くことを考える。家には常に酒を用意しておかないと落ちつかない。他のことなら外出が面倒に感じる状況でも酒を入手するためなら積極的に出かけるなど。これが高じて仕事が終わると帰宅まで待ちきれずに車中でも飲んだり、隠れてでも飲んでしまう。


2.アルコールを飲みたという欲求を統制することが困難。

 今日はやめておこうと思ってもつい飲んでしまう。一杯だけと決めて飲み始めたはずが、結局は自分の定量を越えてあるだけ飲んでしまう。翌日に酒臭が残るほど飲む。臓器障害を起こすまで飲む。医師から禁酒や節酒を指導されても守れない。


3.飲んでいない時は禁断症状がある。

アルコールを摂取していないとさまざまな禁断症状がある。イライラして落ちつかない、発汗や微熱、脈が速くなる、こむらがえり、不眠、手指の細かい震えなどがあり。依存が進行した状態では、全身の大きな震えや幻覚・妄想などを起こす場合もある。


4.だんだんと飲酒量が増えてきた。

 かつてと同じ量では酔わなくなる。そのために、だんだんと飲酒量が増えてきた。耐性が生じていない人であればとても飲めないような量を飲む場合がある。


5.アルコールのために、それにかわる楽しみや興味を次第に無視するようになった。

 たとえば、飲酒のために、家族で過ごす時間や会話が減った。外出といえば酒を飲むことばかりを優先する。飲んでいる時間が長くなり、他のことができなくなってくる。休日は二日酔いでごろごろ寝ているばかりになる。


6.アルコールによって有害な結果が起きているにもかかわらず、アルコールを摂取する。

 有害な結果とは、アルコールに関連する身体の病気(肝臓病、高血圧、糖尿病、心臓病等々)、うつ状態などの悪化、家庭内でのトラブル、飲酒によって周囲の信頼を失う、飲酒運転などの違法な行動、職場や学校でのトラブル(急な欠勤や遅刻、成績の低下やミス、人間関係の問題等々)。




アルコール依存症 治療


 アルコール依存症治療の基本は、とにかく断酒、つまりアルコールを生涯にわたって絶つことです。酒量を減らせばいいのではないか、と思う人もいると思いますが、酒飲みが酒量を減らすことは極めて難しいのです。もともと依存症になる人は行動に抑制が効かない人が多いのです。


 しかも、お酒は酔うため、ある意味では抑制を開放するために飲むものです。4合のお酒で酔っていた人が、2合しか飲めないのでは、まだこれからという段階です。2〜3日は我慢できても1週間と続かないのです。



 といっても、すでに依存症に陥っている人が自力だけでお酒を絶つのは並大抵のことではありません。そこで、通院して医師の管理を受ける、抗酒剤を使ってアルコールを受け付けないような体の状態を作る、断酒会など自助グループに入ってお互いに励まし合いながら酒を絶つといった方法がとられるのです。


 しかし、それでもアルコール依存症を克服するまでの道のりはかなり厳しいのが実情です。いったんは断酒できても、ほんの少しアルコールを口にするとまたたちまち以前の状態に戻ってしまいます。依存症に完治はないと言われる所以です。実際に断酒に成功する人も、2割ぐらいと言われています。


 しかし、予備軍の段階であればまだ後戻りはできるのです。その方法として、アルコール依存症は迎え酒をきっかけに進行していくことが多いので、二日酔いするほど飲まないことが重要です。


 たとえば、コップ一杯のビールを肝臓で分解するには1 時間ぐらいかかります。日本酒1 合ならば3時間ぐらいです。とすると、翌朝6時までに体からアルコールを抜いておくには、夜9時までに日本酒を3合程度までならば2日酔いにならないという計算になります。


 もっとも、酔いには個人差もあるので、それぞれの経験から割り出して飲むようにしたいもの。また、迎え酒をしないという意味でも、日が高いうちから飲酒しないことも必要です。



 そして、アルコールで肝臓障害を起こしている人は、まずガンマ・GTP(肝臓の機能を表す数字)が正常になるまで、お酒を絶ちます。もし、これができなければすでに予備軍の段階を越えている可能性が高いのです。


 そして、1カ月も断酒をするとみるまにガンマ・GTPの数値は下がってくるはずです。それと同時に、体調もよくなってくるはずです。こうした健康な体の爽快感を味わうことも大切なことです。



 さらに、3カ月断酒を続けてみましょう。1カ月では、すぐに以前のように夜は飲酒、あるいはスナックや飲食店で一杯という生活習慣に戻ってしまいます。しかし、3カ月断酒をすると、お酒がない生活リズム、たとえば夜は読書やスポーツをするとか、家族と団欒の時間を持つなど別の時間割ができてきます。


 体調もよくなり、家族や友人との関係、経済面でも変化が現れるはずです。それが、お酒について考えるきっかけになり、過度の飲酒習慣に歯止めをかけることにもなるのです。



 本当のアルコール依存症になってしまうと、酒を絶つには大変な努力が必要です。そして、日本は飲酒には寛容でもいったん依存症というレッテルを貼られてしまうと、社会的信用を回復するのは容易なことではありません。自分や家族が依存症に陥らないようにすると同時に、何とかアルコールと手を切ろうと頑張っている人を応援し、支えていくことにも努力していきたいものです。(byウーマンズヘルス)




アルコール依存症 Q&A


アルコール依存症は治りますか
アルコール依存症の治療には薬がありますか
どのような人がアルコール依存症になりやすい
男性と女性のアルコール依存症の違い
アルコール依存症は遺伝する
抗酒剤について
アルコールを飲んでも顔が赤くならない人は大丈夫

アルコール依存症は治りますか

 コントロールを失う病気ですから、自己流でやめるのは無理があります。しかし治療と援助を受ければやめられます。最も大変なのは、本人が「何としても立ち直ろう」という強い意思を持って、アルコールを完全にやめなければなりません。

 飲酒量を減らせば大丈夫という考え方は大変危険です。心と体がアルコールを覚えてしまっているので、アルコールを一口、口にするとすぐに抑制がきかなくなり、元に逆戻りしてしまう危険が強いので、完全に断ち切らなくてはなりません。

 専門の治療の場や回復を続けるための自助グループは、全国各地にあり、実際にたくさんの人が回復し社会復帰しているますのでご安心下さい。



アルコール依存症の治療には薬がありますか

 現在のところはアルコール依存症を治す薬はありません。薬は断酒の手助けをする目的で使用されます。例えば、気分の落ち込みが強い時は抗うつ薬、不安が強い時は抗不安薬、また、幻覚がある場合は抗精神病薬を使用します。また、お酒を飲むと気持ち悪くなる作用がある薬もあります。



どのような人がアルコール依存症になりやすい

 子供の頃に虐待を受けて心に傷を負っている人、日常のストレスが強い人、また、気分の落ち込みが強い人はアルコール依存症へのリスクが高くなります。アルコールが、心の中で抱えている問題から逃れるための手段になってしまうからです。


男性と女性のアルコール依存症の違い

 女性の場合はアルコール依存症になるきっかけが、心理的な問題に起因することが多いといわれています。女性の場合は家の中で隠れて飲酒することが多く、男性のように家族に暴力をふるったり、人間関係のトラブルを起こすなど目立った異常が現れにくい傾向があります。

 そして、こうした自分の飲酒習慣や生活態度に強い罪悪感を抱き、その苦しさからますます酒に逃げたり、時には自殺を企てることも稀ではありません。ですから、異常に気づいたらすぐに病院で専門家に相談することが、本人をその辛さから救うことにもなります。



アルコール依存症は遺伝する

 親がアルコール依存症であると子供もアルコール依存症になりやすい傾向があることが指摘されています。

 ある調査では、親がアルコール依存症である場合、子供がアルコール依存症になる確率は18%であるのに対し、血縁関係はない養父母がアルコール依存症である場合、子供がアルコール依存症になる確率は5%と報告されています。

 とすれば、こういう危険因子を持つ人は、より飲酒に注意して、アルコール依存症にならないように注意するべきといえましょう。だたし、アルコールは嗜好品なので、飲まなければ、アルコール依存症になる危険は防ぐことができるということです。



抗酒剤について

 アルコールの大半は肝臓で分解さアセトアルデヒドという物質に変わります。このアセトアルデヒドは、非常に毒性が強く、頭痛や動悸、吐き気などの不快感を起こします。つまり、悪酔いの症状はこのアセトアルデヒドが原因です。お酒に弱い人はアセトアルデヒドが体にたまりやすい人といえます。

 抗酒剤は、このアセトアルデヒドが分解されるのを阻害する作用があります。そこで、抗酒剤を飲んでからアルコールを飲むと、すぐに気分が悪くなって、お酒を楽しめなくなるのです。といっても、抗酒剤はあくまでもやめようとする本人の意思を手助けするもので、抗酒剤を飲めば酒をやめられるわけではありません。



アルコールを飲んでも顔が赤くならない人は大丈夫

 顔が赤くなるのは、体内に入ったアルコールが分解される過程でできる有害物質アセトアルデヒドの作用です。一般に「酒に強い」と言われる人は、このアセトアルデヒドを分解する酵素の働きが正常で、分解がスムーズなので、飲んでも顔に出ないのです。

 反対に「弱い」と言われる人は、酵素の働きが弱い、もしくは全く働かない人で、アセトアルデヒドが長時間体内に留まり、顔が赤くなるのです。つまり、顔色が変わらない人は、たくさん飲んでも体調に異変がないため、気づかないうちに大量のアルコールを摂取してしまうことになり、かえって依存症になる危険性大なのです。