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イボ痔・きれ痔の治療

痔の最新治療―可能な限り切らずに治す (よくわかる最新医学)
 イボ痔・きれ痔の治療・解消

イボ痔の治療

 
  痔の治療は、生活療法と薬によって症状を改善していくのが基本になりますが、手術が必要な場合もあります。

 イボ痔の場合は、まず生活療法と薬によって治療を行い、あまり効果がみられない場合は、専門医による外来処置(日帰りで行える治療)、それでもダメな場合は手術という流れになります。

 イボ痔の治療の中心となるのはなんといっても日常生活でのケアです。そして補助的に薬を用いることで治療します。
 


痔の生活療法

 
 痔の主な原因となるのは、便秘や下痢などの便通異常です。痔は生活習慣病の一つとも言われており、それには不規則な食事、偏食、暴飲暴食、極端なダイエット、禁煙、運動不足、心身のストレスなど、痔になりやすい生活習慣を改善することが治療の基本となります。


正しい排便習慣を身につける
 毎日、排便する習慣を身につけるようにします。便意があるときはがまんしないでトイレにいきましょう。ただし、1回の排便時間はできれば3分以内にしましょう。トイレで長時間いきんでいると、肛門に大きな負担がかかり、痔が悪化することになります。完全に出し切ろうと強くいきんだり、長時間座って頑張ったりすると、肛門のうっ血の原因となります。


朝食をしっかり食べる
生活習慣の改善では、食事の見直しが欠かせません。まずは朝食をしっかり食べることが必要です。

 排便にはリズムがあります。便意がもっとも起こりやすのは、通常、朝食を食べたあとです。朝、からっぽの胃に食べ物が入ると、腸の運動が活発になり。便が出口へと送り出されて「出したい」という便意が起こります。きちんと食べて、排便をしっかりすませるという習慣をつけることは、便秘予防とは解消にたいへん効果があります。


食物繊維と油脂類をとる。
 たっぷりのかさがあって、ある程度のなめらかさがある便が毎日出ていれば、痔になることはほとんどありません。それには食物繊維と油脂類、水をたっぷりとるのが有効です。

 野菜や穀物などに多く含まれる食物繊維は、便をつくる元になります。食物繊維は水分を吸収して便をやわらかくし、便のかさも増やしてくれるので、大腸のぜん動運動が活発になり、便通の改善につながります。また、適度の油分や脂肪分は便になめらかさを与えて、排便をスムーズにおこなえるようになります。


水分をたっぷりとる
 便の成分の大半は水分ですでので、こまめに水分補給をするように心がけます。1日に1.5〜2リットルの水をとると健康によいと言われますが、便通をよくするという点からも、たっぷりの水分補給はおすすめです。 


リラックスを心がける
 過度なストレスが原因で胃や十二指腸に穴があくことがあるように、緊張状態が長く続いたり、仕事が忙しくなったり、人間関係のストレスがたまったりすると痔が悪化することがあります。

 ストレスがあると知らず知らずのうちに体全体が緊張して力が入り、おしりの穴もキュツとしまったような感じになります。反対にリラックスするとおしりの筋肉もゆるみます。また「笑うとおしりの穴が動く」といわれているように、よく笑うことは痔の改善につながります。


運動不足を解消
 特にソファや椅子に座りっぱなしや長時間立っていることは肛門のうっ血を招き、痔になりやすくなります。痔や便秘の予防には、ウォーキングや軽い体操だけでも、それを毎日続けることで十分な効果があります。

 車を使わずに歩く、エレベーターやエスカレーターを使わず階段を利用するなど、ふだんからこまめに体を動かる習慣をつけることが大切です。
 


痔のくすり

 
  痔の薬は日常生活のケアに加えて、補助的に座薬や軟膏などの薬を用います。内服薬と外用薬がありますが、内服薬にはほとんど下剤が入っていて便秘を防ぐ効果があります。

 外用薬はその効能によって「ステロイド系」「ビスマス系」とそれ以外のものに分けられます。これらを症状に合わせて使い分けるようにします。軟膏と座薬は使用法が異なるだけで、その成分は同じです。



ステロイド系
 副腎皮質ホルモンを合成したもので、炎症や痛みを抑える強力な作用があります。しかし、効果が強い分副作用もあります。痔核の急性期に用いられます。


ビスマス系

 止血作用があり、即効性にすぐれています。しかし、ステロイド系と同様に副作用がでることがありますので注意が必要です。


そのほかの薬
 「ステロイド系」「ビスマス系」と比べるとマイルドで即効性にかけますが、そのぶん副作用の心配がないので安心して使用できます。症状がひどくないときは、こうした体にやさしい薬がいいでしょう。

 


痔の手術

 
  痔の手術は、薬や生活改善による治療では治らず、手術をしなければ痛みや出血、腫れなどの不快な症状が改善しない場合や、日常生活に支障をきたすために早めに治療したい場合などに行われます。

 痔核(イボ痔)は内痔核の「脱出」がひどくなり、指で押し戻さないと元にもどせない状態になったようなときは手術が必要になりますが、その全てが手術になるわけではなく、痔核の脱出によって生活がいちじるしく支障をきたし、本人も手術を希望する場合に行われます。

 きれ痔はほとんど薬物療法で治りますが、慢性化して肛門が狭くなっているような場合は手術が必要になることもあります。

 痔は命にかかわるような病気ではありません。がまんして先延ばしするより早期にすっきり手術で治してしまうのもいいでしょう。


日帰り手術がふつうに

 日帰り手術とは、手術が終わればその日のうちに帰宅して、手術後は自宅で静養して、翌日からはほぼふだんどおりの生活が送れるようになります。とはいっても麻酔をして何らかの処置をしていますので無理は禁物です。

 最近では一部の痔ろうの手術をのぞいてほとんど「日帰り手術」でできるようになっています。最新技術の手術では、手術時間も短く、痛みも少なく手術の負担も軽くなっています。仕事が忙しくて休みがとれない人には大きな利点です。


手術後の痛みや出血
  
 手術をして傷が治るまでは最低1ヶ月ほどかかります。ほぼ毎日便を出しますので、手術後は少量の出血があるのがふつうです。

 また排便するとき痛みもありますが痛み止めの薬でおさまります。便秘や下痢をしなければ、手術から1〜2週間ほどで、排便時の痛みはだんだん消えていきます。


肛門の清潔を保つ
 
 肛門はシワの集まりです。排便後は、お尻をふくだけでは汚れはとれません。汚れたままにしておくと細菌が増えて、症状を悪化させる原因になります。排便のあとはお湯で洗うなどしていつも清潔を心がけます。



手術後の入浴は
 
 痔を手術したあとは、おしりを温めることが大切です。温めることで血行がよくなり痛みがかるくなります。日帰り手術を受けた場合は、手術当日からお風呂に入って、おしりを温めましょう。入浴すると血行がよくなって楽になるだけでなく、おしりを清潔に保つことができ、傷口の回復も早くなります。



手術費用の目安
 
 痔の手術には健康保険が適用されますが、保険が効かない自費診療だけの肛門クリニックもありますので、事前に問合せをしたほうがいいでしょう。

 痔の手術にかかる費用は、保険診療では、日帰り手術で、自己負担額は高くても3万円前後というのが一般的です。