子供のアスペルガー症候群について正しく理解するための基礎知識




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 子供のアスペルガー症候群


 アスペルガー症候群の症状

社会性の発達障害 手順に強くこだわる
友達と一緒に遊べない

全体をうまく捉えられない(視覚)

人ごみや騒音が苦手(聴覚)

特有の身体感覚を持つ(触覚)

保育士の言うことが理解できない 視線の意味が分からない
友達から誤解されることがある 過去と現在を同じに感じる
大人びた口調で話す 運動が苦手

 アスペルガー症候群の子供は「社会性の発達障害」

 子供の発達には「運動の発達」「知能の発達」「社会性の発達」といった3つの領域に分けられます。「運動の発達障害」は歩行が遅れたり、手先が不器用など運動能力に障害がある子供です。「知能の発達障害」は知的能力や学習能力などの知能の発達に障害があり、これはIQ(知能指数)の伸びによって判断ができます。

 「社会性の発達障害」は他人の表情や動作の意味を理解し、集団の場のルールに従って人間関係をスムーズにする能力です。

 アスペルガー症候群の子供には運動の発達や知能の発達には遅れがありませんが、他人と円滑に過ごしていくための能力である「社会性の発達」に遅れがおるため、スムーズな人間関係をうまく築くことができません。アスペルガー症候群の子供には「社会性の発達障害」の意味を十分理解したうえで、子供がつらい思いをしなくてもすむような対策を考えることが大切です。

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 アスペルガー症候群の子供は「友達と一緒に遊べない」

 アスペルガー症候群の子供は親と一緒に過ごしている幼児期は、自分の居場所がはっきりしているので安心して過ごせます。しかし、保育園に入るようになり、集団生活を始めると「友だちと一緒に遊べない」という特有が目立つようになります。
 アスペルガー症候群の子供は集団の中では自分のポジションがはっきりしないため不安を感じます。

 また相手の表情や動作の意味を理解するのが苦手なため、大きなストレスを感じることになります。さらに、興味あることに没頭しやすいという特性も重なり、友だちを避けて一人で遊んでいることが多くなります。

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 アスペルガー症候群の子供は「人ごみや騒音が苦手」

 普通の人は人ごみや騒音の中でも会話などに集中することができます。これは耳にはいってくる音の中から「相手の声」だけに焦点をあわせ、他の音にフィルターをかけることができるからです。これを「選択的注意」といいます。

 しかしアスペルガー症候群の子供は、「選択的注意」の能力が十分に働かないため、必要な情報を選んで注意を傾けることが苦手です。このため人ごみや大きな音がする場所を嫌います。
 人ごみでは、多くの音が一度に耳に入ってきてしまい、道を歩いている人の靴音や車の騒音などがすべて耳に入ってきて混乱してしまうのです。耳の悪い人が補聴器をつかった場合も同じような感覚になるといいます。

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 アスペルガー症候群の子供は「保育士の言うことが理解できない」

 アスペルガー症候群の子供は言語の発達は人並み以上にすぐれていることが少なくありません。人並み以上に言葉は理解できるのに、集団の中では保育士の言うことが正確に理解できないことが多くあります。

 通常、保育士は幼い子供たちには、言葉といっしょに自分の感情やしぐさを使って子供たちに指示をあたえます。ところがアスペルガー症候群の子供は、表情やしぐさから相手のいいたいことを読み取るのが苦手なため、逆にその指示が理解しにくくなってしまいます。
 ですから、アスペルガー症候群の子供に指示を与えるときには、感情に訴えて本人に考えさせるのではなく、指示したい情報を言葉で正確に伝えるほうがよく理解できます。

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 アスペルガー症候群の子供は「友達から誤解されることがある」

 アスペルガー症候群の子供は思ったことを素直に口に出してしまいがちなので、他人から誤解されることがあります。
 アスペルガー症候群の子供は、知っている言葉はたくさんあっても、その言葉の裏に気持ちをこめることが苦手です。素直に事実をいっただけなのに、どうして泣いたり怒ったりするのかが理解できません。
 また相手がいやな顔をしてもその表情や意味がよくわかりません。特に相手をばかにする気持ちも非難する気持ちもないのですが、正直に事実だけを言ってしまうので、友達から誤解されることになります。

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 アスペルガー症候群の子供は「大人びた口調で話す」

 私たちは、人と話すときは言葉に抑揚をつけることで自分の感情を表現します。例えば、子供が「ママ、おもちゃを取って」とママに言うとき、ママに甘えたい気持ちや、ママと一緒に遊びたい気持ち、何をしてあそぼうかという、わくわくした気持ちなど、さまざまな思いがこめられているため、甘えたような口調になるのが普通です。

 しかし、アスペルガー症候群の子供は言葉に感情をこめて、自分の気持ちを伝えることが不得手で、言葉の抑揚から相手の気持ちを察することも苦手です。
 アスペルガー症候群の子供にとっては、「おもちゃを取ってほしい」という事実を伝えることが第一になり、言葉はそれを伝える手段としてとらえます。ですので「おもちゃを取ってください」などと言った大人びた口調で話すことがよくあります。

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 アスペルガー症候群の子供は「手順に強くこだわる」

 「いつも通る道とちょっと違う道をいってみよう」と好奇心いっぱいの子供たちなら。ごく当たり前のことですが、こういった予定外の行動はアスペルガー症候群の子供をとても混乱させます。
 アスペルガー症候群の子供はいつもの道と違う道を通るという予期せぬ体験に不安を感じてしまいます。そのため同じ手順に強いこだわりを持ちます。

 これはアスペルガー症候群の子供が物事をとらえるときの特有の認知の仕方です。アスペルガー症候群の子供は予定外のことが起こると、そのあとに起こることを想像するのが苦手です。そのためどうしたらいいのかわからなくなり、不安を感じパニックを起してしまうことがあります。

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 アスペルガー症候群の子供は「全体をうまく捉えられない」

 アスペルガー症候群の子供は物の見え方のも特有の感覚をもっています。普通私たちは全体像を見るとき、これがどういったものかというのを瞬時にとらえます。そして次に細部を見ていくという作業を無意識のうちにおこなっています。

 しかしアスペルガー症候群の子供はこの認識作業がうまくできません。例えば、自分の部屋の中で、出かける時に机の上においた本が、帰った時に位置がずれていた場合、ここは自分の部屋ではないと感じてしまうのです。これは細部を積み重ねて全体をとらえるというアスペルガー症候群の特有の感覚のためです。全体が見えなくなるのは認識作業がうまく行えないためなのです。

 同様に、人の顔を見てその表情を理解することも苦手です。普通はその人が怒っているか、喜んでいるかは、顔全体の表情をみれば瞬時にわかりますが、アスペルガー症候群の子供は顔全体の表情をうまくとらえることができないため、表情を理解するために目や口といった個々のパーツの形をたよりに判断することが必要になります。
 例えば、「喜んだ顔」というのは「目が開いて、口の両端があがる・・・」など、顔の作りとその動きをひとつひとつ確認しないと表情を理解することができないのです。

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 アスペルガー症候群の子供は「特有の身体感覚を持つ」

 アスペルガー症候群の子供には聴覚や視覚だけでなく触覚や身体感覚にも独特の感受性があります。

 通常、服を着たり靴を履いていたりしても、その感覚を意識することはありません。しかし、アスペルガー症候群の子供の中にはこの感覚がつねに意識にのぼってしまうという子がいます。何か他のことをしていても、服が体に触れる感覚や、靴が足を覆っている感覚が気になってしまいます。触覚への刺激が痛みを伴う場合もあります。

 また、身体感覚がうまくつかめないこともあります。私たちは通常、目をつぶっていても自分の手や足がどんな状態になっているかわかります。しかし、アスペルガー症候群の身体感覚の特性では、例えば、こたつの中で自分の足がどこにあるか分からなってしまい、こたつから出られなくなるということさえあります。

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 アスペルガー症候群の子供は「視線の意味がわからない」

 私たちは生まれながらの習性として、相手の目を見ることによって、その視線の方向を探ろうとします。しかし、アスペルガー症候群の子供は生まれもった特性から、人の顔や目に関心があまりありません。そのため、相手の目を見て気持ちを探ることがうまくできません。
 アスペルガー症候群の子供が、視線をなげかけられると目をそらせたり、ちらりとかすめるように見るのは、視線の意味が分からないからです。
 普通の人は人の顔を見たとき、脳の上側頭回という部分が働きますが、アスペルガー症候群の子供はそこが働きません。決して相手の行動を嫌ってのことではないことを理解しましょう。

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 アスペルガー症候群の子供は「過去と現在を同じに感じる」

 アスペルガー症候群の子供は時間についても独特の感覚をもっていることが分かっています。私たちは現在を基点に過去や未来のことを考えます。時間は止まらずに流れ、直線でつながっていると感じています。

 しかしアスペルガー症候群の子供はこうした時間の連続性が時々とぎれることがあります。例えば、家族みんなで「今夜の夕食」について話をしている時、突然、何年も前に行ったキャンプの話をしたりして皆を驚かせたとします。このときアスペルガー症候群の子供の中では、過去のキャンプのことが現在のことのように意識にのぼっているからです。 
 「タイムスリップ」といわれるこの時間の感覚はアスペルガー症候群の大きな特徴の一つです。

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 アスペルガー症候群の子供は「運動が苦手」

 アスペルガー症候群の子供の中には体を器用に動かすことができない子供がいます。これはアスペルガー症候群の子供は視覚や聴覚、触覚などといった外部からはいってきた感覚刺激を、脳の中で上手に整理できないと考えられます。その結果、体の位置や運動感覚をうまく知覚でできず、体の動きがぎこちなくなってしまうと考えられています。

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