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社会人になると抽象的な表現が頻繁につかわれるようになります。例えば「そこはうまくお願いします」などというと、アスペルガー症候群の人は、「そこ」とは?「うまく」とは?といちいち悩んでしまいます。
これはアスペルガー症候群の人は脳の特性からうまく想像力を働かせることができないからです。また、言葉のウラを読む想像力も少ないため、たとえ話や皮肉も通じません。
上司が間違いを指摘するために「よくこんなすごいことができるね」などと皮肉をこめて言ってもアスペルガー症候群の人は「私はすごいことをしたのか」と文字通りに受け取ってしまい、逆に素直に喜んでしまうなんてこともあります。
アスペルガー症候群の人にとって、言葉はそのまま「事実を伝達する道具」なので、相手の言った言葉を文字通りに受け取ってしまいます。
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アスペルガー症候群の人は「想像力を働かせる」という作業が難しく、すばやく発想の転換をすることも不得手です。
これは応用力に欠けるという形であらわれ、急な予定の変更についていくことに困難を感じます。
アスペルガー症候群の人は数字や漢字などの「普遍的なもの」に対しては安心感を持ちますが、「変動するもの」には強い不安を感じてしまいます。このため、日常の場面では、予定外の仕事や変更にはひどくとまどってしまうということになります。
これには、相手の動きを頭の中でまねる働きをする「ミラーニューロン」という神経細胞が関わっていると考えられています。
「ミラーニューロン」とは相手の動きを頭の中でまねることによって、相手の行動や考えを理解できるようになる働きですが、アスペルガー症候群の人は、この動きが弱いため、「変動するもの」を理解するのに時間がかかり、急な予定の変更に対応しづらいと考えられます。
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アスペルガー症候群の人は、狭い範囲で深い知識を得ることが大変得意ですので、多くの情報を記憶することや、単純な作業を根気よく続けることには優れています。
反面、交渉ごとが多いような仕事は、アスペルガー症候群の人がもっとも苦手とする分野です。
それは、アスペルガー症候群の人が持っている社会性の障害、コミュニケーション能力の障害、想像力の欠如などがスムーズな人間関係を作りにくくするからです。
ですので、アスペルガー症候群の人は得意分野にあった仕事につくことが必要になります。
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アスペルガー症候群の大きな特徴として、すぐに全体像をつかむことができないことがあります。
例えば、普通の人は木を見たとき、瞬間的にそれを木として認識することができます。しかし、アスペルガー症候群の人にはそれが難しいのです。
アスペルガー症候群の人は、全体を見る前に、まず目の前の葉っぱに注目します。1枚の葉っぱの特徴をよく観察し、今度は別の葉っぱを観察します。そうやってみていくと、一つとして同じ葉っぱはありません。やがて、枝があることに気づき、さらに幹があることに気づきます。そこで、やっと「葉があり、枝があり、幹がある・・・これは木だ」ということになります。
これは極端な例ですが、このようにアスペルガー症候群の人は細部に集中するあまり、全体像をとらえにくいという特徴を持っています。
アスペルガー症候群の人の、仕事上の作業効率が悪くなるのは、全体像を把握するのが必要な場面で、細部に集中しすぎてしまうせいなのです。
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「選択的注意」というのはたくさんの情報の中から自分に必要な情報だけを取り出す能力です。これは「カクテルパーティ効果」とも呼ばれ、会話がたくさん飛び交う騒がしい場所でも1つ聞き取りたい会話があれば意識することで聞きとれることができる、というものです。
アスペルガー症候群の人はガヤガヤとした環境の中にいると、すべての音が耳に入ってきてしまうために、必要な情報や相手の声に集中することができません。
アスペルガー症候群の人にとって耳栓はある意味必需品となります。耳栓をしたほうが、かえって相手の声が聞き取りやすくなります。またノイズをキャンセルするヘッドフォンなども有効です。
これは、視覚についても同様で、例えば、机の上が乱雑にちらかっていると、その中から必要なものを選ぶのが難しいのです。また、周囲がまぶしく感じることも多く、その際はサングラスが有効になります。
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アスペルガー症候群の人は、その場の状況にふさわしい表情をすることができないため、多くの場面でつらい思いをしています。
アスペルガー症候群の人は「喜怒哀楽がないのではないか」と誤解されてしまうことがしばしばあります。しかし、アスペルガー症候群の人にも当然、うれしい時や悲しい時があります。
たとえば、最愛の人や、自分を可愛がってくれた人が亡くなった時なども、悲しい顔をすることが出来ないため、周囲にはその悲しみが伝わりません。しかし、後から「悲しくて、もう自殺してしまいたい」などと言って周囲を驚かすことになります。
それは、さまざまなことに考えをめぐらせてしまい悩みを深めてしまうのでしょう。
これなどは周囲の人にはなかなかわかりにくいため、アスペルガー症候群の人は誤解を受けてつらい思いをすることになります。
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私たちは生まれながらの習性として、相手の目を見ることによって、その視線の方向を探ろうとします。しかしアスペルガー症候群の人は人の顔や目に関心があまりありません。そのため、相手の目を見て気持ちを探ることがうまくできません。
実際に、毎日会っている会社の同僚や友人の顔が覚えられないとか、服装が変わると見分けられないということがあります。
また顔の表情を見たときに、そこから相手の感情を読み取ることも苦手です。たとえば、怒った表情で近づいていっても、それを見て自分が怒られているということを、理解することは難しいのです。
このように、相手の様子にふさわしい態度が取れないため、どこへ行っても人間関係に支障をきたすことになりかねないのです。
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人によってアスペルガー症候群の出方はさまざまですが、本人は成長の過程で「自分は他の人とどこか違っている」とか「なんとなく生きにくい」と感じているものです。
それはアスペルガー症候群の原因が「生まれつきの脳の機能障害」にあるからです。アスペルガー症候群の人は知的障害がないために、周囲の人に合わせようと努力をしながら生きています。生まれたときから、普通の人とは違う感覚を持ちながら「変な人と思われない行動」をしないように努力をしています。
ことに、知能の高いアスペルガー症候群の人は、「こういう時はこう反応する」という知識を学び取りながら、かなりの程度まで、周囲にあわせることができるといいます。
アスペルガー症候群の症状は大人になって突然でてくるわけではありません。大人になって社会生活を送るようになると、アスペルガー症候群の症状を表面化させてしまうので、大人になってから意識するようになるのです。
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普通の人は社会生活を送るうえで、ごく自然に2つのことを同時進行させることが可能です。
たとえば、話を聞きながらメモをとる、電話をしながら書類を見るなど、特に難しいことではありませんが、アスペルガー症候群の人の場合は、話を聞くときには「聞くことに」集中するため、同時にメモを取ることには困難を感じてしまいます。その結果、何をしたらよいかわからなくなってしまいます。
また、アスペルガー症候群の人には、複数の情報処理が苦手という脳の特性を持っているため、2つのことを同時に進行させることが必要になる仕事は不得手です。
ですので、アスペルガー症候群の人に指示を与えるときには、要点をひとつひとつ伝えて、順を追って達成させる必要があります。
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